全ての生命が発する微かな光
私たちの体の中では、毎日たくさんの化学反応が起きています。
その中には「酸化反応」と呼ばれる、エネルギーを生み出すための重要な働きがあります。
しかし、この反応では同時に「活性酸素種(Reactive Oxygen Species/ROS)」と呼ばれる分子も生じます。
活性酸素種は細胞を傷つけることもあるため、体はそれをうまく制御しながら生きています。
実は、この酸化のプロセスの中で、ほんの少しだけ光が生まれることが知られています。
これはたとえば、コンサートなどで使うケミカルライトのように、化学反応で光が出る「化学発光」と原理は同じです。
ただし、生き物の体から出る光はあまりにも弱く、1秒あたり10〜1000個程度の光子が1平方センチから出るレベルです。
そのため、通常のカメラでは検出が難しく、これまで画像としては捉えにくい現象でした。
研究チームはこの“見えない光”をどうにかして捉えようと考えました。
彼らは、完全な暗闇を作れる特別な装置を用意し、外の光が一切入らない状態でマウスや植物を撮影しました。
使ったのは、電子を増幅して微弱な光を検出できる「電子増倍型CCDカメラ(Electron-Multiplying CCD/EMCCD)」や高感度のCCDカメラです。
この装置は、夜空の星を撮影するような感度を持ち、わずかな光子の違いも拾い上げることができます。
さらに、研究者たちはマウスを生きた状態と安楽死後で比較しました。
また、植物にもさまざまな環境変化を与え、温度を上げたり、葉を少し傷つけたり、薬剤を塗布したりして、その光の変化を観察しました。
こうして準備を整えた彼らは、ついに「生き物の光」を画像として記録することに成功したのです。