Credit:OpenAI,ナゾロジー編集部
biology

人間含む生物は全て死ぬと消える微かな光を発している

2025.10.11 21:00:10 Saturday

私たちは普段、自分の体が光っているなんて思いません。

しかし、実は人を含むすべての生き物は、ごくわずかな光を放っていることが知られています。

その光はあまりにも弱く、肉眼ではまったく見えません。

この現象は「超微弱光子放出(Ultraweak Photon Emission/UPE)」と呼ばれ、生命の営みの中で生じるごく微かな光なのです。

今回、カナダ、カルガリー大学(The University of Calgary)、カナダ国立研究会議(National Research Council Canada/NRC)らの共同研究チームは、この見えない光を実際に“撮影する”ことに成功しました。

研究では、マウスや植物が放つわずかな光を特殊なカメラでとらえており、ストレスを受けたときにこの光が強くなること、そして死ぬと急激にこの光が失われていく様子が観察できたという。

この研究の詳細は、2025年4月24日付で科学雑誌『The Journal of Physical Chemistry Letters』に掲載されています。

World’s first ultraweak photon emission technology holds promise for medical forecasts https://nrc.canada.ca/en/stories/worlds-first-ultraweak-photon-emission-technology-holds-promise-medical-forecasts
Imaging Ultraweak Photon Emission from Living and Dead Mice and from Plants under Stress https://doi.org/10.1021/acs.jpclett.4c03546

全ての生命が発する微かな光

私たちの体の中では、毎日たくさんの化学反応が起きています。

その中には「酸化反応」と呼ばれる、エネルギーを生み出すための重要な働きがあります。

しかし、この反応では同時に「活性酸素種(Reactive Oxygen Species/ROS)」と呼ばれる分子も生じます。

活性酸素種は細胞を傷つけることもあるため、体はそれをうまく制御しながら生きています。

実は、この酸化のプロセスの中で、ほんの少しだけが生まれることが知られています。

これはたとえば、コンサートなどで使うケミカルライトのように、化学反応で光が出る「化学発光」と原理は同じです。

ただし、生き物の体から出る光はあまりにも弱く、1秒あたり10〜1000個程度の光子が1平方センチから出るレベルです。

そのため、通常のカメラでは検出が難しく、これまで画像としては捉えにくい現象でした。

研究チームはこの“見えない光”をどうにかして捉えようと考えました。

彼らは、完全な暗闇を作れる特別な装置を用意し、外の光が一切入らない状態でマウス植物を撮影しました。

使ったのは、電子を増幅して微弱な光を検出できる「電子増倍型CCDカメラ(Electron-Multiplying CCD/EMCCD)」や高感度のCCDカメラです。

この装置は、夜空の星を撮影するような感度を持ち、わずかな光子の違いも拾い上げることができます。

さらに、研究者たちはマウスを生きた状態と安楽死後で比較しました。

また、植物にもさまざまな環境変化を与え、温度を上げたり、葉を少し傷つけたり、薬剤を塗布したりして、その光の変化を観察しました。

こうして準備を整えた彼らは、ついに「生き物の光」を画像として記録することに成功したのです。

次ページ本文2:生命活動と光のつながりが明らかに

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