渋滞知らず?量子世界の不思議なエネルギーの運び方

渋滞に巻き込まれたとき、「自分が二人いたら別々の道を同時に走れて、一番早いルートを見つけられるのに」と考えたことはありませんか?
もちろん、現実には私たちが分身することはできません。
しかし量子の世界では、エネルギーそのものが似たようなことを可能にするかもしれません。
普通の感覚では、エネルギーというのは一つのルートをまっすぐ進むイメージですが、量子の世界では「エネルギーの場所」がはっきりと一箇所に決まらず、ふわっと広がった雲のようになれることがあります。
この性質は「非局在化」と呼ばれ、量子の特徴のひとつです。
詰まっていた道から詰まっていない道へ経路を変えて最速で進んでいくというのは、一見すると道から道へのワープのようにも思えるでしょう。
このような量子的な仕組みを、自然界の生き物が実際に利用している可能性が最近の研究で指摘されるようになりました。
例えば植物は太陽の光を受け取り、それを効率的にエネルギーとして利用していますが、こうした生命活動の背後には量子の不思議な仕組みが隠れているかもしれないのです。
例えば植物は、太陽の光を受け取ってエネルギーに変える「光合成」を行いますが、そのときのエネルギー移動は非常に効率的です。
葉っぱの中にある葉緑体では、光を吸収したエネルギーが複雑な分子ネットワークを経て反応センターまでほとんどロスなく届くことが知られています。
この驚くべき効率の秘密を探る中で、科学者たちはもし植物がエネルギー輸送の効率化にこうした量子現象を利用しているなら、それはエネルギーが「非局在化」して複数の経路を同時に通ることができるという、先ほど説明した現象を自然が活用している可能性があります。
そこで研究チームは「量子効果が実際にエネルギー伝達を助けるのか」を確かめるために自然のヒントを踏まえつつ、温度や雑音の影響を含む量子モデル(理論的な仕組み)を設計して調べることにしました。
特に研究チームが注目したのは、植物が実際にやっているかもしれない方法、つまりエネルギーを最初から一つの場所に集中させるのではなく、非局在化、すなわち複数の場所に広げ送り出す方法を試すことです。
もしこの初期条件が有利なら、「自然界の高効率」という観察と、量子効果がエネルギーを加速するという発想が、理論の上で一本につながります。