「首には鎌、足には南京錠」墓は一度掘り返されていた?
「75号墓」と称される墓に埋葬されていたのは、死亡時17~19歳ほどの若い女性でした。
放射性炭素年代測定では、埋葬年代として1620~1674年の可能性が最も高く、17世紀半ばごろの人物だったと考えられています。
異様なのは、その遺体に施された処置です。
女性の首の上には大きな鉄製の鎌が置かれ、刃は喉へ向けられていました。
さらに左足の親指には三角形の鉄製南京錠が付けられていました。
こうした鎌や南京錠は、死者が生者の世界へ戻ることを防ぐための「反悪魔的」「厄除け的」な習慣と結びつけられています。
そのため、この墓は一般には「吸血鬼墓」として紹介されてきましたが、研究者たちは当時の信仰を単純に現代的な「吸血鬼」のイメージへ当てはめることを避けています。
さらに今回の調査から、この2つの道具は同時に置かれたとは限らないことが分かってきました。
脚の骨が乱れていなかったことから、南京錠は最初の埋葬時から付けられていた可能性があります。
一方、墓の土には掘り返された痕跡があり、研究者たちは埋葬後に墓が再び開けられ、その際に鎌が追加された可能性を指摘しています。
しかも骨の位置からみて、再開封は遺体が完全に腐敗する前だった可能性があります。
もしこの解釈が正しければ、人々は葬儀の時点ですでに彼女を警戒して南京錠を付け、その後さらに恐怖を強め、墓を掘り返して追加の「封印」を施したことになります。
吸血鬼を恐れられた女性の「正体」とは?
分析から浮かび上がったのは、社会から完全に孤立した貧しい女性という単純な姿ではありませんでした。
頭蓋骨の近くからは、絹を土台とし、純銀と金メッキされた銀の糸で飾られた高価な頭飾りの断片が見つかりました。
こうした装飾品から、研究者たちは彼女が貴族や裕福な都市民など、比較的高い社会階層に属していた可能性を指摘しています。
一方、炭素と窒素の同位体から食生活を調べると、主に穀物を食べており、墓地の成人の中では動物性タンパク質の摂取が少ない側に位置していました。
ただし、これはそのまま「栄養失調だった」ことを意味するわけではありません。
17世紀には戦争や疫病、食料不足などもあり、裕福な家庭でも常に豊富な食事を得られたとは限らないためです。
DNAにも興味深い特徴がありました。
女性のミトコンドリアDNAは「J1c2c1」という珍しい母系系統に属し、北欧や西欧、特にスカンジナビアとの古い結びつきを持つ系統でした。
しかし歯のストロンチウムと酸素の同位体は、彼女自身が墓のあるピエン周辺で育った可能性が高いことを示しています。
つまり、本人がスカンジナビアから来たのではなく、地元で育ちながら母系祖先に北欧や西欧とのつながりを持っていた可能性があります。
【女性の遺骨の画像】
さらに研究者たちは、口蓋や頭蓋底、首の骨に緑色の変色を発見しました。
分析すると口の奥では銅の濃度が特に高く、銅を含む何らかの物体や物質が口、あるいは鼻から喉の近くまで入れられていた可能性があります。
硬貨だった可能性も検討されましたが、金属組成などが一致せず、具体的に何だったのかは分かっていません。
このため女性には、南京錠、鎌、そして口や鼻に入れられた可能性のある物体という、複数の特殊な処置が施された可能性があります。
しかし、ここまで調べても、彼女がなぜ恐れられたのかは判明していません。
骨には死因となる明確な外傷や病変も残っていませんでした。
17世紀の社会では、突然死や病気、異質とみなされた振る舞い、さらには疫病や飢饉といった災厄まで、亡くなった人物と結びつけて考えることがありました。
彼女も何らかの理由で「死後も危険な存在」とみなされたのかもしれませんが、その理由は今も謎のままです。
今回の研究が明らかにしたのは、「吸血鬼が存在した」ということではありません。
むしろ、17世紀の人々が死者をどれほど現実的な脅威として恐れ、その恐怖が墓を掘り返してまで追加の対策を施すほど強かった可能性があるということです。
名前も死因も分からない17~19歳の女性ですが、その墓に残された鎌と南京錠は、400年前の人々が抱えていた恐怖を現在まで鮮明に伝えています。























>「吸血鬼」として恐れられた人物の墓と見られています
などと、何度も「吸血鬼」という言葉が出て来るけど、この見つかった女性の遺体を何故「吸血鬼」と結びつけて話を進めているのか、その理由について説明が無いので、何故そんな話になるのか解りません。
その女性が生き返る事が恐れられていた事は判るものの、それだけであり、その女性が生き血を啜るようになる事を恐れられていた様子は全くありません。
もし吸血鬼となる事が恐れられていたのなら、口に詰め物をしたり、歯を抜いたり、口を縫い付けたりする等といった対策が採られていないのはおかしな話です。
そもそも現代的な吸血鬼像はブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』やシェリダン・レ・ファニュの『カーミラ』などの19世紀後半のフィクション小説により確立したものであって、それ以前の17世紀には「吸血鬼」と呼ばれるモンスターは存在せず、生き血を吸うという性質を持つ様々な種類のモンスターが伝承等の中にいただけであり、それらも単に血を糧にして生きているというだけであって、死者が甦ったものとはまた異なる存在である場合が多いので、そのような血を吸わない可能性が少なくないものを記事で「吸血鬼」と呼んでいる事に違和感を覚えます。
吸血鬼バンパイアは何故か美男美女とか…謎です。
吸血鬼バンパイア美男美女というのは、あくまで“現代のフィクション作品におけるイメージ”です。
そして現代のフィクション作品における吸血鬼バンパイアは相手を魅了して自分の虜にし、正常な判断能力を失わせている間に、キスでもするかのような流れで首筋に噛み付いて血を啜るというのがパターンです。
そのような様式美を追求する際に、もし獲物を魅了するバンパイアが不細工だったら絵面が成り立たないので、作品作りの上で必然的に美男美女にせざるを得ないという事なのでしょう。