採石場から見つかった、異様に立派な石造構造物
発見の舞台となったのは、スコットランド北部サザーランド地方、ドーノック近郊にあるエヴェリックス採石場です。
2026年、採石場の拡張に先立ってHighland Archaeology Servicesが考古学調査を行ったところ、57基の穴や柱穴などの遺構と、1基の石造構造物が確認されました。
今回の初期調査で調べられたのは予定地全体の約18%にすぎません。
周辺には多数の柱穴があり、かつて鉄器時代の円形住居が建っていた可能性も指摘されています。
その中でひときわ異彩を放っていたのが、地面を掘り下げて造られた楕円形のような石造構造物でした。
大きさはおよそ長さ3メートル、幅2メートル、深さ1メートルで、床には平らな石板が敷かれています。
壁は大きな基礎石の上に石を規則正しく積み上げたもので、内部へ降りるための急な石段までありました。
あまりにも丁寧に造られていたため、調査員は当初、比較的新しい時代の施設ではないかと思ったほどでした。
ところが内部や周辺から出土した頁岩(けつがん)製の腕輪の破片や、石けん石製の鉢などから、この場所は鉄器時代に属する可能性が高いと判断されました。
さらに重要なのが、壁の下部です。
石材の隙間には粘り気のある粘土状の素材が詰められており、水などの液体を保持するための防水処理だった可能性があります。
そのため研究者たちは、この施設がもともと墓として造られたのではなく、水をためる井戸、あるいは何らかの儀式に利用された施設だった可能性を考えています。
井戸の使用を終えるために「人間を埋葬」した?
そして、この構造物の底から見つかったのが成人1人の遺骨です。
遺体は最下層の堆積物の中に横たえられていました。
一方で、遺体と一緒に埋める一般的な副葬品は確認されていません。
代わりに注目されたのが、遺骨の上を覆うように堆積していた大量の動物の骨です。
そのさらに上には、ほかの遺物をほとんど含まない、木炭を多く含んだ層がかぶせられていました。
加えて、内部へ続く石段も意図的に塞がれたような状態になっていました。
チームは、こうした一連の特徴が偶然ではなく、この施設を使わなくする際に行われた儀式的な「閉鎖」を示している可能性があると考えています。
つまり、水などをためる目的で使われていた施設の役目を終える際、底に人間を埋葬し、その上に動物骨や木炭を重ね、最後に入口を塞いだという可能性です。
鉄器時代の重要な場所を閉鎖する際に埋葬を伴う例は、スコットランドの別の遺跡でも知られています。
ただし、今回の構造物が本当に儀式用の井戸だったのか、そして埋葬が閉鎖儀式の一部だったのかは、まだ確定していません。
また現時点では、遺骨の性別や死亡時の年齢、死因も正式には確定していません。
今後は人骨の分析に加え、放射性炭素年代測定、土壌サンプル、動物骨、出土品などの調査が進められる予定です。
約2000年前、人々はこの石造施設を何のために造り、なぜ最後に人間をその底へ横たえたのでしょうか。
今回の発見は、鉄器時代のスコットランドで「場所を終わらせる」という行為が、単なる放棄ではなく、死者や動物を伴う特別な儀式だった可能性を示す興味深い手掛かりです。
ただし、その本当の意味を知るには、眠っていた遺骨と遺物のさらなる分析を待つ必要があります。





















