死者が「起き上がらないように」施された細工

当時の東ヨーロッパでは、体と魂は別々のものだと考えられていました。
人が死ぬと、魂はよりどころを失ったまま40日間さまようことがあるとされていたのです。
その多くは害のない魂でしたが、ごく一部は吸血鬼になって戻ってくるかもしれないと恐れられていました。
しかも、いくつかの条件がそろうと吸血鬼になりやすいと信じられており、人々はその危険を見過ごそうとはしませんでした。
その様子を今に伝えるのが、ポーランド北西部の農村ドラウスコの東のはずれにある墓地「ドラウスコ1」です。
ドラウスコは中世から人が住み続けてきた集落で、この墓地は17〜18世紀のものとされています。
墓地は1929年から調べられてきましたが、本格的な調査が始まったのは2000年代の終わりになってからでした。
2008〜2012年には285体の人骨が見つかり、そのうち6体がふつうとは違う形で葬られた「逸脱(いつだつ)した埋葬」だと判断されました。
そこには、首のまわりの鎌、のどの上の石、背骨を貫く釘といった細工が見られました。
こうしたものは当時のふつうの埋葬には含まれず、死者が吸血鬼として戻ってくると疑われていたことをうかがわせます。
最も多かったのは鎌で、5体では首かお腹のあたりに置かれていました。
墓から起き上がろうとすれば、首が落ちるか、お腹が裂けるようにするためだったとされています。
また2体では、あごの下に大きな石が置かれていました。
これは、生きている人にかみついたり、襲って食らったりできないようにするためだと解釈されています。
ところが、これだけの細工をしておきながら、これらの墓はほかの墓から離れた場所に設けられていたわけでもありませんでした。




















