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本当にすべての物体が引き合っているの?
りんごが木から落ちるのを見るまでもなく、地球上のあらゆる物体は地面に向かって引っ張られています。
それはずっと古代から人々の疑問でした。
アリストテレスは「万物には本来あるべき場所へ戻ろうとする力が働くのだ」と考えました。
彼は鳥が巣へ戻るのも、地面から持ち上げた物が地面に戻っていくのも、同じ原理によるものだと考えたのです。
しかし、太陽や月をはじめとする天体は、空を移動し続けていてあるべき場所があるようには見えません。
物体を地面に引き寄せる力とはなんなのか? それはずっと長い間人類にとっての謎だったのです。
この問題に大きな転機を与えたのが、17世紀の偉大なる科学者アイザック・ニュートンです。
ニュートンは物体に働く「力」というものを明確に定義することで、力の作用で現象を記述する物理学の道を拓きました。
そうなると当然、物質が地面に落ちるという現象も、なんらかの力を用いて説明しなければなりません。
そこでニュートンは地球に向かって働く重力というものについて考えます。
そのとき彼は、これまで誰も考えなかったある重要な事実についてひらめくのです。
「この重力という力は、万有のものだ」
つまり引っ張っているのは地球だけでなく、地球に落ちるりんごなどの物体も同時に地球を引っ張っているのです。
それは地球と月、太陽と地球も互いに引っ張り合っているということです。この考え方によってニュートンは地球に物が落ちる理由と、天空を惑星が運行する理由を1つの理論で説明することに成功したのです。
ニュートンはすべての物体に重力があり、質量の大きい物体ほど巨大な重力を生み出すことを明らかにしました。
しかし、それは本当なんでしょうか? そこら辺の石ころも本当にお互い引き合っているんでしょうか?
万有引力の法則を初めて聞いたとき、そんな疑問を抱いた人は多いと思います。
この事実は実験で確認することが非常に困難で、ニュートンが理論を発表してから100年以上も待たなければなりませんでした。
これを証明したのは、イギリスの科学者ヘンリー・キャベンディッシュです。
彼はこのために、2つの鉛玉を乗せたねじり天秤という実験装置を使いました。
2つの鉛玉を吊るしたワイヤーが、お互いの重力によってねじれるのを、空気や床の振動を受けないようにして確認したのです。
このために彼は実験装置を箱に入れ、さらにそれを小屋の中に置いて、自分ははるか離れた場所から望遠鏡を使って観測したといいます。
重力が万有のものだと確認するのがこれほど困難だった理由は、重力があまりにも弱い力であるためです。
私たちは、普段地球の重力を身体に感じて生活しているので、重力が弱い力だという認識をあまり持てないかもしれません。
しかし、たとえば冷蔵庫にひっつけている小さな磁石は、なぜ重力に引かれて床に落ちないのでしょう?
答えは簡単で、数グラムの磁石が生み出す磁力の方が地球という巨大な物体の生み出す重力より強力だからです。
自然界には、物理学が定める4つの基本的な力(相互作用)、「強い核力」「弱い核力」「電磁力」「重力」がありますが、重力は4つの力の中でも格段に最弱の存在です。
重力があまりにも弱いという問題は、4つの力を統一した理論で語るという物理学の悲願にも障害を生んでいます。
なので、重力という力はこの世界で発生しているのではなく、もっと上の次元から漏れ出てきている力なのではないか、という考え方も登場しています。
重力は後にアインシュタインによって、時空間の歪みなのだと説明されることになりますが、これを2次平面に置き換えて解説しようとすると、2次平面を歪ませるために、3次元空間に働く重力の存在が必要になってしまいます。
こう考えると、たしかに重力が上位の次元から漏れてくる力の一部というのもなんだか納得できる気がしてきます。
「何ゆえに重力はそれほどまで弱いのか?」これは物理学者たちがずっと悩んでいる問いかけなのです。