なんで重いものと軽いものが同じ速度で落ちるの?変じゃない?
重力の説明を聞いた際、軽いものと重いものの落ちる速度が一緒だと言われて、なんだか釈然としない気分を味わった人はいないでしょうか?
これはガリレオ・ガリレイがピサの斜塔で実験したという逸話が有名です。鉄の玉と木の玉を落としたところ、どちらも同じ速度で落下したと言われています。
羽根がゆっくり落ちるのは空気抵抗があるからで、真空で実験すれば鉄球と同時に落ちる、なんて説明も聞き覚えのある人が多いでしょう。
しかし、なぜそんなことになるのでしょうか?
たとえば、軽い子供なら簡単に抱き上げられますが、お相撲さんを抱き上げるというのはちょっとイメージできません。
それは子供とお相撲さんでは、地球に引っ張られている力が異っているからではないのでしょうか?
重力は重いものほど強く働いているのは明らかです。それなら、なぜ落ちる速度は重さに関係なくなるんでしょう?
ここでポイントとなるのが「質量」と「重さ」の違いです。
学校でこの2つを習うとき、なぜか区別されていたことを覚えているでしょうか?
実はこの2つは値はピタリと一致しますが、表している性質は異なっています。
「質量」とは物体の「動かしにくさ」を表しています。一方、「重さ」とは物体が「重力に引かれる強さ」を表しています。
たとえば無重力空間の宇宙で、子供とお相撲さんがお互いに押しあったとしましょう。このとき2人はどのように動くでしょうか?
実はこの場合、子供は速く遠くへ飛ばされてしまいますが、お相撲さんはあまり位置を変えない、という結果になります。
それはお相撲さんの方が「質量」が大きい、つまり動かしにくいためです。逆に「質量」が小さい子供は動かしやすいので、簡単に加速がついて移動してしまうわけです。
一方「重さ」は「重力に引かれる強さ」です。重いものは強く重力に引かれます。
部屋の模様替えをするとき、軽い椅子なら簡単に持ち上がりますが、大きなタンスは容易に持ち上げることはできません。
では重いものと、軽いものを一緒に落とすとどうなるでしょう?
当然重いものは強く重力に引かれ、軽いものはあまり重力に引かれません。しかし、動きにくさの点で見ると、重いものは動きにくく、軽いものは簡単に動いてしまいます。
重いものと軽いものが同じ速度で落ちるというのは、この2つの性質がピタリと釣りあっているために起きている現象なのです。
精密な実験でも、「動かしにくさ」と「重力の強さ」という2つの作用は、なぜかぴったりでキャンセルされる関係にあります。
このため、物質はすべて同じ速度で落ちることになるのです。そして「質量」と「重さ」は実質的に同じことになるので、区別して考える必要もなくなってしまうのです。
この2つの効果が一致していてキャンセルされてしまう不思議については、後にアインシュタインが答えを出すことになります。