罵倒が「ご褒美」になる心理の背景

「マゾヒズム」という言葉は、もともと肉体的な痛みを快感に感じる傾向として知られていますが、心理学の世界ではもう一つ、「感情的マゾヒズム」と呼ばれるタイプがあります。
これは、肉体的な苦痛ではなく、言葉による否定や侮辱、恥をかく状況など、感情を傷つける刺激を心地よく感じる傾向を指します。
これは信頼している相手や好意を持つ相手との間でだけ成立することが多く、その背景にはいくつかの心理的な要因が関係しています。
研究や臨床報告によると、感情的マゾヒズムには次のような心理的背景が関わるとされています。
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自己評価の低さ
自己評価が低い人は、褒められても「本当の自分をわかっていない」と感じることがあります。 むしろ否定や侮辱の言葉の方が、「自分の本当の姿を見抜かれている」という感覚を与え、安心感につながる場合があります。 -
罪悪感の解消
過去の失敗や迷惑をかけた記憶から罪悪感を抱えていると、罵倒されることで「罰を受けた」という感覚が得られ、心理的な負担が軽くなります。 -
権力関係の安心感
相手が優位で、自分が劣位に置かれる状況は、責任や判断の負担から解放される感覚を生むことがあります。 支配される立場は、ある意味「守られている」状態でもあるのです。 -
注目・関心の獲得
否定的な形であっても、自分が相手の意識の中心にいることに満足する場合があります。 これは子どもがわざと親を怒らせる行動や、SNSでわざと挑発的なコメントをする行動と似ています。
ただ、こうした心理的背景があったとしても、当然誰に罵倒されても嬉しいというわけではありません。日常生活の中で罵倒されれば不快感や不安を感じるのが当たり前です。
罵倒されて喜べる背景には、もう1つ重要な要因があります。