食事をやめるのは「ヒゲ疲れ」のせい?
感覚毛として知られるネコのヒゲは、付け根に固有受容器があり、刺激を受け取る役割を果たしています。
それぞれのヒゲは、周囲の触覚情報を電気信号をに変換して、脳に伝えるアンテナのようなものです。
ヒゲは比較的長く、左右の端から端までで胴体の幅と同じくらいの長さがあります。
壁の隙間やケースの開口部の幅はヒゲで確認されており、ネコが狭い場所にも躊躇せず入っていくのは、ヒゲがゴーサインを出しているからです。
その一方で、ヒゲの感覚受容器はとても鋭敏なため、使いすぎるとネコに疲れを起こしてしまいます。
これが「ヒゲ疲れ(ウィスカー・ファティギュ)」と呼ばれるものです。
そして、ネコがボウルの中のエサを食べているときに、ヒゲ疲れが起きていると考えられます。
しかし、それはヒゲがエサやボウルに不必要に接触するからではありません。
モノへの過剰な接触によって生じる不快感は「ウィスカー・ストレス(whisker stress)」として区別されます。
ところが、エサを食べているネコを見ていると、鼻周りの筋肉を使ってヒゲを引っ込め、エサやボウルに当たらないようにしています。
この状態を維持することで筋肉に疲労が生じ、それがヒゲ疲れとなるのです。
昨年、ワシントン州立大学(米)が、科学的に初めてヒゲ疲れを検証した研究を発表しました。
実験では、38頭の健康なネコを対象に、ヒゲの当たりやすい底深のボウルと、ヒゲ疲れが起きにくい皿状のボウルで別々にエサを与え、5分間で食べた量と摂食時間を計測。
結果、両ボウルでの食べた量と摂食時間はほぼ変わらず、食べにくさに明確な違いは見られませんでした。
それでも、追加実験で底深のボウルと皿状のボウルを同時に置いたところ、74%のネコが皿状のボウルを選んでいました。
このことから、ネコがヒゲ疲れの起きにくい方を選んだ可能性が指摘されています。
しかし、専門家は「ネコが食事を途中でやめる原因は、ヒゲ疲れ以外にも考えられるので注意が必要」と述べています。
例えば、ネコの気分や体調、住環境の変化などです。
ネコは犬ほど人とコミュニケーションを取りたがらず、体調の変化にも気づきにくいことがあります。
ただし、飼い始めからエサを残すようなら、ヒゲ疲れの可能性もあるので、病院につれていく前に、底の浅いボウルを試してみるのがいいでしょう。