顔だけでは説明できない「人の魅力」

これまでの研究では、外見的な美しさ、とくに「顔」に注目が集まってきました。
たとえば、顔の左右対称性、多くの顔の特徴を平均したような平均的特徴、そして男女らしさを強調する性的二型性が、一般的に「魅力的」とされてきました。
これらは健康や生殖能力と関係していると考えられ、多くの人が共通して好ましいと感じやすいとされています。
しかし現実の人間関係は、履歴書の証明写真だけで決まるわけではありません。
日常生活では、声のトーン、話し方、動きのしなやかさ、さらには体の自然な匂いといった非言語的なシグナルが常に発せられています。
今回の研究では、オーストリアとドイツの研究者らが61人の「エージェント」(評価対象者)の顔写真、声の録音、無音・有音の動画、そして運動後の体臭サンプルを用意しました。
これを71人の若者たち(評価者)に提示し、それぞれの刺激を「どれくらい魅力的に感じるか」を7段階で評価してもらいました。
その結果、もっとも高く評価されたのは「声と映像が同時に伝わる動画」でした。
表情や声、身体の動きが組み合わさることで、よりリアルでダイナミックな印象が伝わり、魅力を強く感じさせたのです。
逆に、平均すると体臭のサンプルが最も魅力度が低いと評価されました。
顔写真や声、無音動画は中間的な評価にとどまりました。
ただし、それぞれの差は大きくなく、どの感覚も少なからず「魅力の判断」に関わっていることが示されました。