見た目の良し悪しを超えた「シグナル」を受け取っている

研究チームはさらに、魅力の感じ方に「共通の好み」と「個人的な好み」がどのように作用しているかも分析しました。
異性を評価する場合、多くの人が共通して好む特徴(たとえば顔のバランスの良さ)と、各人の独自の好み(例えば「声の高さが好き」「仕草が落ち着いている人に惹かれる」など)が、ほぼ同じくらい影響していることがわかりました。
一方、同性を評価する場合は結果が異なりました。
同性への評価では「個人的な好み」の影響がより強く出ていたのです。
これは同性への評価が恋愛や配偶者選びよりも、むしろ「一緒にいて心地よいか」「仲間として気が合うか」といった要素、つまり相性や主観的な好みに左右されやすいことを示しています。
さらに興味深いのは、異なる感覚同士の関連性です。
たとえば、声が魅力的だと評価された人は顔の魅力度も高いと見られる傾向がありました。
また、体の動きと体臭の魅力度には一貫した関連があったことも判明しました。
これは、動きや匂いが「その人の健康状態やホルモン状態」といった変動的な特徴を反映している可能性を示しています。
このように、私たちが誰かに惹かれる理由は単純な「美男美女かどうか」ではなく、多感覚的な情報と個人ごとの好みが織りなす複雑なパターンに基づいているのです。
今回の研究は「魅力=見た目」という従来の固定観念を大きく揺るがすものでした。
人は顔の美しさだけでなく、声の響きや体の動き、さらには匂いといった多様なシグナルから相手の魅力を感じ取っているのです。