皇帝の手紙はなぜ暗号にされたのか

ナポレオンの時代、暗号はそれほど珍しいものではありませんでした。
軍事や外交にかかわる機密を伝える手段として、広く使われていたのです。
ポーツマス大学の歴史研究員ザック・ホワイト氏は「ナポレオンは広大な帝国の各地に機密を安全に伝えるため、暗号を使わざるを得なかった」と説明します。
手紙が敵に奪われ、皇帝の計画が筒抜けになる危険は常にあったからです。
今回の手紙は、ナポレオンの求めに応じて、継子でイタリア副王だったウジェーヌが書いたものです。
宛先はオーギュスト・ド・マルモン元帥でした。マルモンはアドリア海の東岸に、ほかのフランス軍から遠く離れて駐留していました。
手紙の目的は、ヨーロッパ各地にいるフランス軍と同盟軍の位置を、離れた場所にいるマルモンに知らせることでした。
これが敵の手に渡れば大変なことになるため、文面は暗号に置き換えられたのです。
しかし、この暗号はなかなかの難物です。
チャーチ氏によると、公開されている手紙の画像は、1969年にフランス陸軍の雑誌に載った低解像度のスキャン1枚だけでした。
そこには155種類、合計1300個の記号が並んでいます。
しかもこの暗号は「同音異字式(ホモフォニック)」と呼ばれるもので、よく使う文字には入れ替え可能な記号がいくつも割り当てられています。
つまり、同じ文字でも毎回同じ記号で書かれているとは限らないのです。
チャーチ氏は、AIの力を示すのにふさわしい暗号を探す中で、この手紙にたどり着きました。
彼が使ったのは、OpenAIの新しいAIモデル「GPT-6 Astra」です。






















