北極には六角形、南極には十角形

土星といえば巨大な環が代名詞ですが、北極の六角形の雲の模様も、環に次ぐ名物です。
地球の上空にジェット気流が吹いているように、土星にも緯度に沿って東西に吹く強い風の帯(ジェット気流)が何本も走っています。
六角形は、北極に近い北緯78.5度あたりを一周する風の帯が、6か所で折れ曲がって描く模様です。
1980〜81年に探査機ボイジャーが撮った画像で見つかって以来、六角形は観測されるたびに同じ場所に同じ形で居座り続けてきました。
土星の風の帯は北半球と南半球でほぼ対称に並んでいるので、研究者たちは南極にも似た模様があるはずだと考えてきました。
研究チームは1990年からハッブル宇宙望遠鏡の画像で、北極の六角形と対になる模様を南極に探してきましたが、見つかりませんでした。
2004年から2017年まで土星のそばを回っていた探査機カッシーニの画像にも、南極に居座る多角形は写っていません。
ただ、地球からの観測には、長い空白があります。
土星は軸を傾けたまま太陽を回っているため、地球から見ると、北極が手前を向く時期と南極が手前を向く時期が交互に訪れます。
しかも土星の1年は地球の約29.5年もあるので、南極が奥に隠れたままの時期が十年以上も続くのです。
実際、2012年半ばから2023年までは南極が地球から見て奥へ傾いてしまい、その姿を見ることができませんでした。
カッシーニが去った2017年から、南極が再び見え始める2023年までの約6年間は、南極を見ていた目がどこにもなかったことになります。
転機は2024年、オーストラリアのトレバー・バリー氏とフランスのジャン=ポール・オジェ氏という2人のアマチュア天文家が撮った画像に、南極付近でかすかに波打つ帯が写っていたことでした。
2人の画像は、バスク大学が世界中の観測者から惑星の画像を集めているデータベース(PVOL)に届いたものです。
研究チームが同じ場所をハッブルの画像で調べ直すと、南極が見え始めて間もない2023年10月の時点で、帯は薄いながらも十角形の輪郭を描き、2025年8〜9月の画像では、十角形の10本の辺が出そろっていました。
姿を現した十角形も、六角形と同じく風の帯が折れ曲がって描く模様で、一辺は約1万6800kmで、地球の直径(約1万2700km)より長い辺が10本つながっています。
ただ六角形は6本の辺がどれも同じ濃さで見えるのに対し、十角形は10本の辺のうち3本がくっきり、4本がやや薄く、3本はぼやけています。
研究チームは、十角形が数年前にはなく、いまも輪郭を整えている最中であることから、何十年も居座る六角形とは違って「一時的で、発達途中の現象かもしれない」とみています。






























