ニホンリスは毒キノコを安全に食べられる
代表的な毒キノコであるベニテングタケ(学名:Amanita muscaria)は、周囲の樹木と互恵的な関係を結んでおり、森林生態系の維持に重要な役割を担っています。
その反面、ベニテングタケに含まれるイボテン酸、ムシモール、ムスカリンは、毒性をもつ化学物質として有名です。
これらが体内で中毒を起こすと、幻覚やせん妄、発作を引き起こし、最悪の場合は死に至ります。
成長したベニテングタケは直径8〜20センチに達し、真っ赤な傘に白いイボが広がっています。
いかにも毒キノコらしいので、見分けるのは比較的容易です。
今回、神戸大学大学院理学研究科の末次健司(すえつぐ・けんじ)准教授と、在野の写真家である五味孝一(ごみ・こういち)氏により、毒キノコを日常的に食べるニホンリスの生態が観察されました。
驚くべきことに、ニホンリスはベニテングタケのみならず、テングタケなど、他種の毒キノコも普通に食べていました。
同じ個体が数日間にわたりテングタケ属を食べ続けていたことから、ニホンリスは安全に毒キノコを摂取できることが示されています。
毒キノコは、動物たちに食べられるのを防ぐために毒を進化させたと考えられているため、今回の発見はとても興味深い現象です。
一方で、毒キノコが食べられたとしても、胞子が繁殖可能な状態で排泄されるのであれば、リスの移動に伴って、自らも生息域を広げることができます。
また、リスの方は毒キノコを食べられるような適応を遂げることで、食料資源をめぐる競争をまぬがれている可能性があります。
このように、ニホンリスと毒キノコの間には、相互扶助的な契約がなされているのかもしれません。
しかし、現時点では解明すべき謎が山積みです。
なぜリスは安全に毒キノコを食べられるのか?
リスは毒キノコの胞子散布にどのような役割を果たしているのか?
毒キノコはリスに食べられることで、本当に分布域を広げられるのか?
今後は、リスが胞子の運び手となっているかを確かめるべく、フンの中に繁殖可能な胞子が存在するかを調べていく予定です。
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