「つながりを生む遊び」は心を軽くするのか
スマートフォンやパソコンを通じて、直接会うことなくネット上のつながりだけで世界中の人と遊べるオンラインゲームは、子どもや若者にとって欠かせない日常の一部になりました。
「マイクラ」で友だちと建物を作ったり、「フォートナイト」でチームを組んで戦ったりする時間は、まさに「つながりの体験」と言えます。けれどもその仮想のつながりが、心を癒やすのか、それとも逆に孤独感を強めるのかは、はっきりしていません。
心理学の世界では、人には「他者とつながりたい」という基本的な欲求があることが知られています。自己決定理論(Self-Determination Theory)では、この欲求が満たされると心の健康が安定しやすいとされています。
では、オンラインゲームの「つながり要素」はその欲求を満たすのでしょうか? それとも、画面越しのやりとりでは本当の安心感を得られず、かえって孤独感を深めてしまうのでしょうか?
過去の研究結果はこの問題に対してバラバラです。「オンラインゲームは孤独感を減らす」という報告もあれば、「むしろ増やす」という報告もあります。このような矛盾した結果になるのは調査対象の設定が大雑把過ぎた可能性が考えられます。
この疑問をはっきりさせるためには、年齢や男女の違いを含めて、より大規模で長期的な調査が必要なのです
そこでチェコのマサリク大学(Masaryk University)の研究チームは、チェコ在住の11〜16歳の生徒3010人を対象に、2021年6月から2022年12月までの約1年半にわたり、半年ごとに4回のオンライン調査を行いました。
この大規模調査では、子どもたちが「最近よく遊んでいるオンラインゲーム」を挙げてもらい、それぞれのゲームがどれだけ“人と関われる要素”を持っているかを点数化しました。同時に、孤独感や気分の落ち込みについても尋ね、時間の流れに沿って両者の関係を追跡しました。
この調査では、心理学科の4人の評価者が、協力プレイの有無、ボイスやテキストチャット、ギルドやクランなどの仕組みを考慮し、改訂版の社会的相互作用ポテンシャル評価(SIPA 2.0)を用いて、ゲームごとの“つながり度”を0〜12点で採点しました。
たとえば「Minecraft」は8点、「Roblox」は11点、「Fortnite」は10点。一方「The Sims」や「Subway Surfers」は低得点でした。
各回の分析では、子どもが挙げたゲームの中で最も高い点を、その時期の“つながり度”として扱いました。
心の指標は2つ。ひとつは「孤独感」、もうひとつは「抑うつ気分(depressive mood)」です。
孤独感は「自分はひとりぼっちだと感じるか」で、抑うつ気分は「気分が沈むことがどれくらいあるか」を5段階で答えてもらいました。いずれも信頼性の高い質問セットで、安定した結果が示されています。
そして調査の結果、このオンライン上のつながりが孤独を深めるのか、むしろ改善するのかという問題には、明確な男女差が見られることが明らかになったのです。