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数学者の「ひらめき」は2分前から前兆が始まっていた

2025.11.14 19:00:29 Friday

アメリカのカリフォルニア大学マーセド校(UC Merced)で行われた研究によって、数学者が「ひらめき」を起こす約2分前から、黒板の前での動きのパターンにこれまでとは違う行動変化が現れることが明らかになりました。

これまでひらめきは瞬間的に起こると思われていましたが今回の研究により「ひらめき」には予兆が存在することが示されました。

ひらめきの直前に、私たちの脳に何が起きているのでしょうか?

研究内容の詳細は2025年8月18日に『Proceedings of the National Academy of Sciences』にて発表されました。

Catching a ‘eureka’ before it strikes: New research spots the signs https://www.eurekalert.org/news-releases/1094620
An information-theoretic foreshadowing of mathematicians’ sudden insights https://doi.org/10.1073/pnas.2502791122

「ひらめき」は本当に突然訪れるものなのか?

「ひらめき」は本当に突然訪れるものなのか?
「ひらめき」は本当に突然訪れるものなのか? / Credit:Canva

何か良いアイデアが浮かぶ瞬間というのは、よく「稲妻が落ちるように突然やってくる」と表現されます。

たとえば、古代ギリシャの偉大な科学者アルキメデスが、浴槽で突然良いアイデアを思いつき、興奮のあまり裸のまま街中を走り回った話はとても有名です。

また、数学の天才と呼ばれたガウスも、自分のひらめきの瞬間を「まるで天から降る稲妻のようだった」と表現しました。

このように歴史を通じて、多くの人が「ひらめき」を神秘的な現象だと考えてきました。

しかし、だからこそ「ひらめき」は科学的な研究対象としては難しいものでした。

なぜなら、科学的に研究するためには、「ひらめきが起こる瞬間」を狙って正確に観察しなければいけません。

ところが、その瞬間がいつ訪れるか誰にも予測できず、科学者が「ひらめきの瞬間」を実験室でピンポイントに捕まえるのは非常に困難だったのです。

ここで研究者たちは「別の方法があるかもしれない」と考えました。

科学の世界ではよく、ある現象が起きる前に、小さな「サイン」が現れることがあります。

こうしたサインは専門的に「前兆」と呼ばれますが、実は物理や生態学など自然科学の世界では非常によく知られています。

たとえば水が沸騰するときを考えてみましょう。

水を沸かすと最初は静かですが、沸騰する直前になると鍋の底から細かい泡が激しく出てきます。

これは液体が気体へと急激に変化する直前に見られる現象です。

また森林でも、ある種の生態系が大きく崩れるときには、その直前に植物や動物の数が激しく変動したり、異常な兆候が現れたりすることが知られています。

このような大きな変化の直前に起こる小さな兆候は「相転移」(状態が急に切り替わる現象)という言葉で説明されます。

この「相転移」の考え方にヒントを得て、研究者たちは人間の頭の中で起きる「ひらめき」も、これと同じように小さな前兆を持つのではないかという仮説を立てました。

つまり、良いアイデアが浮かぶ直前には、内で何らかの変化が起き、それが外部の行動にも小さな乱れとして現れる可能性があるのでは、と考えたのです。

本当に人間の「ひらめき」の前にも前兆はあったのでしょうか?

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