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「好きな仕事」を探すことに伴うリスクとは / Credit:Canva
psychology

「好きな仕事を見つけなさい」というアドバイスの暗い側面

2025.11.20 06:30:41 Thursday

「今の仕事は好きな仕事だ」と情熱を持って語る人を見ると、どこか羨ましく感じることがあります。

自分もいつか「好きな仕事に出会いたい」と願い、「好きな仕事を見つけなさい」という言葉に従いたくなる気持ちも自然なものです。

しかしアメリカのペパーダイン大学(Pepperdine University)ビジネススクールのジャクリン・マーゴリス博士は、このアドバイスには隠れた問題があると指摘しています。

博士は複数の心理学研究と労働研究をもとに、「好きな仕事こそ正しい」という考え方が、時に働く人を苦しめてしまうことを明らかにしています。

この記事では、その科学的な背景を3つの視点から紹介します。

It’s Time to Retire the Advice “Find a Job You Love” https://www.psychologytoday.com/us/blog/shifting-workplace-dynamics/202511/its-time-to-retire-the-advice-find-a-job-you-love

「好きな仕事を見つける」という考えと、その暗い側面

「好きな仕事をしよう」という考え方が世の中に広まった理由の1つに、スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で語った有名なスピーチがあります。

ジョブズは「素晴らしい仕事をする唯一の方法は、それを愛することだ。まだそれを見つけていないなら、探すのをやめてはいけない」と語り、この言葉は多くの人々に大きな影響を与えました。

その後、学生たちは「天職探し」を求められるようになり、キャリア指導でも「好きなことを仕事にすべきだ」という考え方が繰り返し強調されました。

こうして、「好きな仕事こそ正しい」という価値観が社会全体に根付いていったのです。

しかし、研究の視点から見ると、この価値観には重要な問題があります。

マーゴリス博士が紹介する研究の中には、仕事に強い情熱を持つ人の働き方を調べたものがあります。

心理学者のバンダーソンとトンプソンは、2009年の研究で動物園の飼育員にインタビューし、彼らの働き方の特徴を探りました。

飼育員たちは「動物のためなら何でもしたい」と強い使命感を持っていましたが、その一方で長時間労働や低い給与、厳しい作業環境をあまり疑問に思わず受け入れてしまう傾向がありました。

情熱が強いほど、負担の大きさに気づきにくくなるのです。

さらに、他の研究をまとめた2013年のレビューでは、雇用主は、仕事を心から愛しているように見える人に対して、給与や手当といった報酬を多く与えなくなる傾向があることも指摘されています。

「好きでやっているなら、今の待遇でも満足するだろう」と無意識に考えてしまうからです。

その結果、熱心に働く人ほど不利な条件を受け入れやすくなってしまいます。

採用の場でも、同じような偏見が働くことがわかっています。

ある調査では、求職者が面接で「給与について教えてください」と質問しただけで、採用担当者からの推薦率が約20%下がりました。

これは「給与を気にする人=情熱がない人」と誤って判断されてしまうためです。

この「動機の純粋性バイアス」によって、情熱以外の理由で働く人が不当に低く評価されてしまうことがあります。

しかし実際には、多くの人が生活のために働いており、それ以外にもいくつもの動機を同時に抱くものです。

「好き」は変化する──情熱は永遠ではない

「好きなことを仕事にすれば一生幸せでいられる」という考え方は、とても魅力的に聞こえます。

しかし心理学の研究では、人が「幸せ」と感じるポイントは年齢とともに変化していくことがわかっています。

マーゴリス博士は、自身の元学生の例を紹介しています。

その学生は20代の頃、大規模な音楽フェスやライブイベントの制作に情熱を注ぎ、その仕事を心から楽しんでいました。

しかし年齢を重ねると、非日常の続く生活に疲れを感じるようになり、落ち着いた夜や休日がほしいと思うようになっていきました。

この変化は、心理学研究とも一致しています。

2013年の研究によれば、若い時期は刺激の強い特別な体験で幸福を感じやすい一方、年齢が上がるにつれて、日常の中の落ち着いた体験でも大きな満足を得られるようになります。

そのため、若い頃に「これこそ天職だ」と思っていた仕事が、年齢を重ねた自分にとって必ずしも最適とは限らないのです。

また、情熱を仕事にすると、その情熱が摩耗しやすいことも研究で分かっています。

好きなことでも、それを毎日仕事として続けると、情緒的な疲れがたまりやすくなります。

その結果、仕事に対するコントロール感が弱まり、以前はワクワクしていたはずの仕事が「思っていたほど楽しくない」と感じることがあります。

教師や看護師といった「天職」と言われる職業でも、当初の情熱が薄れ、仕事に対する気持ちが距離をおくようになるケースが報告されています。

つまり「好きだから続けられる」という考え方は、必ずしも長続きするとは限らないのです。

幸福には2種類あり、仕事の価値は「楽しい」だけで測れない

最後に、マーゴリス博士が強調する重要な視点があります。

それは、仕事の価値は「楽しいかどうか」だけでは決められないという点です。

心理学では幸福を2つに分けて考えます。

1つは、楽しさや快適さなど、短い時間で感じる気持ち良さを示した幸福です。

もう1つは、成長している実感や、人の役に立っている手応え、人生に目的を感じるといった、長く続く深い満足の伴った幸福です。

ブライソンとマッケロンの研究では、仕事を始めた瞬間に人々の幸福度が大きく下がることがわかりました。

この落ち込みは通勤や家事よりも大きく、仕事が必ずしも「楽しい」ものではないことが示されています。

しかし一方で、失業は人生全体の幸福度を大きく下げる要因であり、仕事は生活を支え、社会とのつながりをつくり、収入を得るために欠かせない存在です。

たとえ仕事がいつも楽しいわけではなくても、「自分は役に立っている」「生活が安定している」と感じられることが、深い幸福を支える大きな要素になっています。

つまり、仕事は「その場の楽しさ」を与えるだけではなく、「人生に意味や安定を与える存在」でもあるのです。

天職を求めて仕事を転々とした場合、後者の幸福はなかなか得られないかもしれません。

ここまでで、3つの視点から「好きな仕事を見つけなさい」というアドバイスについて考慮できました。

確かにこのアドバイスは魅力的で良いものですが、研究が示すのは、情熱には搾取や偏見、疲れといった影が隠れているという現実です。

仕事の価値は「どれだけ好きか」だけではなく、「自分や家族の暮らしを支え、人生にどんな意味をもたらしてくれるか」によっても決まります。

だからこそ、情熱以外の理由で仕事を選ぶことを否定してはいけません。

「好きな仕事を見つけなさい」というアドバイスの暗い側面のコメント

ゲスト

忘れがちなことですがジョブズは労働者ではありませんので、労働者が彼の言葉を参考にするのは問題でしょう。
それは置いておいて、好きなことを仕事にするのは精神衛生上良くないことが多いので、仕事にするのなら嫌いなことにしておいたほうがいいですよ。
お金もらってるから仕方なくやる、仕事なんてそんなものでいいんですよ。
搾取の構図に自分からハマりに行くことなんてありません、そんなことしなくてもハマるのですからね。

とんび

好きな仕事はやりがいを感じる仕事であることが普通であるとして、
やりがい: あり・なし
収入: 多い・少ない
の四象限で説明できる

ゲスト

なるほど確かに好きで仕事をしている人は「やりがい搾取」される傾向はあると思う

しかし一方で、仕事が好きな人には仕事では勝てない現実があるし、好きでなければ責任や誇りが持てないとも思う
バブル崩壊後に日本が没落した要因の一つは、就職難によって「職にありつければ何でもいい」という状況が作り出され、皆がやりたくない仕事を仕方なくやっているため、仕事に対する誇りや責任感が失われたことも大きいと思っている

かく言う私は、最初の職場でとてもやりがいのある仕事に出会えたが「やりがい搾取」に遭ってしまった
次の職場では、やりたくない仕事なのに「やりがい搾取」に遭ってメンタルを壊した
されに次の職場も、やりたくない仕事で「やりがい搾取」に遭ってしまった

もう、やりがいがあっても無くても「やりがい搾取」に遭うのなら、やりたい仕事をやりたいよ!

ゲスト

子供の頃からゲームが好きで、理系の大学に進み、大手ゲームメーカーに入社し、念願のゲーム開発者になりました。
今はどうか分かりませんが、当時は元旦から休日出社、会社に寝泊まりしてデスマーチ当たり前の環境でした。
転職などしながら十五年ほど働きましたが、身体を壊し、精神も疲弊し、一年ほど海外で過ごした後、今は全く関係のない仕事をしています。
収入は減りましたが、人間らしい暮らしで心身とも安定しました。
時々趣味で小さいフリーゲームを作ったりして遊んでいますが、このくらいの付き合い方が気楽です。
好きなことを仕事にするのには、働く側も雇う側も歯止めが効かなくなる傾向があり、覚悟が必要です。

ゲスト

僕は本当に好きな仕事について25年間充実感に満ち楽しく過ごしたが、時代の流れで僕の職種は需要が減り、内容が変化した途端に毎日が苦痛になり4年で辞めてしまった。仕事は合っているほうがいいに決まっていると僕は思ってる。社畜になるかどうかはまた別問題。僕は自分の技術に自信があったから早く処理して残業しないことをスマートだと思っていた。むしろ苦手な仕事になった時のほうが、自信が持てないためにせめて残業して善処したことを示すという心理に陥ってしまった。
合う仕事にこだわるが故に、長年再就職できずにいる。まあ人それぞれだ。

Ivy10

人は遊ぶために生まれて来た。
にも拘らず何時の間にか労働することが当たり前のようになっている。
原因は人口の膨張にあるのではないでしょうか。
地球自然の生産力以上に人口が増えてしまったから足らない分を労働で補わなければならない。
それでも自然破壊が許容される時代には人間の(悪?)知恵で生産力を嵩上げさせることができた。
そこでは所謂遣り甲斐を感じることができる人達もいたし、その労働が天職(仕事)であるかのように勘違いする幸せな人達もいたでしょう。
しかしながら母なる地球が人間による侵略に耐えきれなくなってきた。
これからは好きとか遣り甲斐とかは言っていられない時代が必ずやって来ます。
地球の生産力と人間の消費(浪費?)のバランスを回復するには人口を減らす以外に方法が無いことを為政者達は当然知っていて知的にも経済的にも貧しい人々を戦争に駆り立てることを企んでいるに違いありません。
だから小さな局面での労働力の需給の逼迫を取上げて少子化を憂えるような顔をしているのです。
根本問題は人口が減らなければ解決しないのですから貧しい側の我々は寧ろ現在の少子化を躊躇なく粛々と進めることが肝要かと思います。

ゲスト

好きなことを仕事にしたいなら雇われの身でいるよりも独立開業を目指す方が良いと思う。料理好きから自分の店を持つようになった人を何人か知っているが、彼らは収入が安定しなくても時にかなりの長時間労働になっても、人生に満足しているように思える。
自分の店を持てば自分が働く環境を自分でコントロールでき、やりがい搾取の被害に遭うこともない。
記事にある動物園の世話係のような独立がまず無理な仕事もあるけど、ペットシッターとかの方向なら道はあるだろう。
ただみんながこういう観点から仕事を選んでいくと情熱ある人が個人で小規模なことしかせず、やる気のない人ばかりが大きな仕事をするようになって全体的な生産性はかなり低下しそうだ。

 

誰しも、楽しくない仕事、ワクワクしない仕事に、そもそも就こうとは思いません。
もしも高い給料につられて入っても、採用面接や、入社後の勤務態度で問題ありとみなされて追い出されます。

だからといって、必ず好きなことができるわけではないし、できても、給料も含めた待遇面と相殺になる、やりがい搾取と表裏一体です。

本当に淡々と仕事をして成果を出すことが是であるならともかく、静かな退職が問題視されるように、妙にアッパー系だったりコミットメント、つまり「やる気」を評価してきたりするため、線引きをしたくてもできないのが実情です。

ゲスト

仕事するのに意味なんて見つけちゃいけないと思うけどな
いいから黙って働けって事だろ

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