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「好きな仕事」を探すことに伴うリスクとは / Credit:Canva
psychology

「好きな仕事を見つけなさい」というアドバイスの暗い側面 (3/3)

2025.11.20 06:30:41 Thursday

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幸福には2種類あり、仕事の価値は「楽しい」だけで測れない

最後に、マーゴリス博士が強調する重要な視点があります。

それは、仕事の価値は「楽しいかどうか」だけでは決められないという点です。

心理学では幸福を2つに分けて考えます。

1つは、楽しさや快適さなど、短い時間で感じる気持ち良さを示した幸福です。

もう1つは、成長している実感や、人の役に立っている手応え、人生に目的を感じるといった、長く続く深い満足の伴った幸福です。

ブライソンとマッケロンの研究では、仕事を始めた瞬間に人々の幸福度が大きく下がることがわかりました。

この落ち込みは通勤や家事よりも大きく、仕事が必ずしも「楽しい」ものではないことが示されています。

しかし一方で、失業は人生全体の幸福度を大きく下げる要因であり、仕事は生活を支え、社会とのつながりをつくり、収入を得るために欠かせない存在です。

たとえ仕事がいつも楽しいわけではなくても、「自分は役に立っている」「生活が安定している」と感じられることが、深い幸福を支える大きな要素になっています。

つまり、仕事は「その場の楽しさ」を与えるだけではなく、「人生に意味や安定を与える存在」でもあるのです。

天職を求めて仕事を転々とした場合、後者の幸福はなかなか得られないかもしれません。

ここまでで、3つの視点から「好きな仕事を見つけなさい」というアドバイスについて考慮できました。

確かにこのアドバイスは魅力的で良いものですが、研究が示すのは、情熱には搾取や偏見、疲れといった影が隠れているという現実です。

仕事の価値は「どれだけ好きか」だけではなく、「自分や家族の暮らしを支え、人生にどんな意味をもたらしてくれるか」によっても決まります。

だからこそ、情熱以外の理由で仕事を選ぶことを否定してはいけません。

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