Credit:canva
psychology

男性は面食いの傾向が強く、女性は性欲が伴うと面食いになる

2025.08.02 12:00:47 Saturday

好きになる基準は人により様々ですが、大きく分けて「中身重視か、外見重視か」、という議論になることがよくあります。

実際どちらを重視する人が多いのかを調査した心理学研究もありますが、そこでは男性は外見を、女性は性格や安定性をより重視する傾向があると報告されています。

こうした恋愛観の性差は、進化の観点からも広く知られています。

しかしアメリカのローズ大学(Rhodes College)の心理学者シエラ・D・ピーターズ(Sierra D. Peters)氏らの研究チームは、どんな相手を求めるかの傾向は、性別ではなく「性欲(sexual desire)」の状態で変化するのではないかと考え、改めて調査を行いました。

すると非常に興味深い傾向が見つかったという。

この研究の詳細は、2025年6月付けで科学雑誌『Journal of Experimental Social Psychology』に掲載されています。

Fascinating new research reveals how sexual desire shapes long-term partner preferences Fascinating new research reveals how sexual desire shapes long-term partner preferences https://www.psypost.org/fascinating-new-research-reveals-how-sexual-desire-shapes-long-term-partner-preferences/
The evolved psychology of mate preferences: Sexual desire underlies the prioritization of attractiveness in long-term partners https://doi.org/10.1016/j.jesp.2025.104791

恋愛相手を選ぶとき何を重視するのか?

人は恋愛のパートナーを選ぶときに、何を重視するのか?

こうした疑問については、心理学や進化生物学で長年研究されてきました。特に進化心理学の分野では、男性は生殖に適した健康的な相手を本能的に好むため、若さや外見を重視する。一方、女性は子育てや生活の安定を見越して、経済力や誠実さといった資源的価値を重視するという考え方が広く知られています。

確かに、心理学調査などでも統計的にそうした傾向が観察されています。たとえば過去の国際調査では、理想の結婚相手に「容姿の良さ」を挙げる割合は、男性の方が女性よりも一貫して高くなる傾向が報告されています。

しかし、このような違いは本当に「性別そのもの」によるものなのでしょうか。誰かを魅力的だと感じる基準は、いつも同じなのでしょうか。たとえば、恋愛モードに入っている時と、そうでない時で、人は同じように相手の外見を評価するのでしょうか。

今回の研究チームは、こうしたパートナー選びに見られる「性差」に疑問を投げかけました。彼らが注目したのは、恋愛感情や欲望の根底にある「性欲(sexual desire)」という心理的な動きです。性欲とは、生理的な衝動だけでなく、誰かに性的な魅力を感じて心が動くこと全般を指します。

研究チームは、「人が相手に求める条件は、そのときの心理状態によって変わるのではないか」という仮説を立てました。特に、外見重視かどうかという選好は、性欲がどれだけ強くなっているかに左右される可能性があると考えたのです。

この仮説を検証するために、研究ではまず554名の米国人成人を対象に、理想の結婚相手に求める要素を調査しました。参加者は「魅力的な外見」「共感力」「収入や地位」「創造性」といった要素にポイントを振り分ける課題に取り組みました。これは、限られたポイントで「理想の相手の性格パラメータを作成する」という、ゲーム形式の設定です。

併せてこの研究では、参加者に性欲を測定するための質問票に答えてもらい、外見重視の傾向と性欲の強さとの関係を分析しました。

結果、確かに既存の研究と同様に、男性は女性よりも外見に多くのポイントを割り振る傾向がありました。しかし興味深いのは、今回の研究では性別に関係なく性欲の強い人ほど、より外見を重視するという明確な相関が見られたことです。

しかしこれだけでは、「性欲が強い人は外見重視」という相関があるだけで、因果関係ははっきりしません。つまり、「外見を重視する人が性欲も強いだけでは?」という見方もできてしまいます。

そこで研究チームは次のステップとして、性欲を実験的に喚起することで選好がどう変わるかを確かめる追試験を実施しました。

この実験では、1,000人以上の大学生を無作為に2つのグループに分けました。一方のグループには、過去に「非常に性的に惹かれた体験」を思い出して書いてもらいました。これは、脳の中で性欲を活性化させる「プライミング」という心理的手法です。もう一方のグループには、中立的な課題として「最近うれしかった出来事」を書いてもらいました。

その後、両グループに再び理想の相手にポイントを割り振る課題を行ってもらい、性欲が喚起された状態とそうでない状態で、相手への評価がどう変わるのかを比較しました。

すると、性欲を喚起されたグループでは、特に女性の外見重視が大きく高まるという結果が出たのです。コントロール群では外見に割り振るポイントが低かった女性も、性的記憶を想起したあとは、男性とほぼ同じ割合で外見にポイントを割り振るようになりました。

この変化は、男性よりも女性の方が顕著で、「女性は性欲によって評価の軸そのものが変わる」という可能性を強く示唆しています。

また、追加の分析では、相手を「性の対象とはみなさない」ように指示した場合、参加者たちは再び外見よりも性格や誠実さを重視する傾向に戻りました。つまり、性欲が伴わなければ、人は中身を重視しやすいというわけです。

このように、ダン氏らの研究は、恋愛相手に対して「男性は見た目重視、女性は中身重視」という単純な傾向ではない、人間の恋愛観の柔軟さと心理的な変化の影響を浮き彫りにしたのです。

こうした発見は、今後の恋愛戦略に活かせるかもしれません。

次ページあえて相手に性欲を持たせないことが恋愛戦略になる?

<

1

2

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

スマホ用品

心理学のニュースpsychology news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!