昔からあった「鎮痛の手がかり」を拾い直す

一般に「快感のための器官」とされてきたクリトリス。
しかし本当に快楽だけのためにあるのでしょうか?
たとえば女性のオーガズム(絶頂)は生殖に必須ではありませんが、もし役に立たないのであれば進化の中で消えていてもおかしくありません。
実際、出産時に自ら刺激を行う女性もいると報告されています。
1980年代には、女性の性器刺激によって痛みの感じ方が弱まる(痛みの検知や我慢のしきい値が上がる)ことが示されており、快感の器官に痛みを制御する役割がある可能性が指摘されていました。
また先行研究では、性行に伴う痛みを軽減するために、クリトリスに対する刺激の有効性が示されました。
さらに神経科学の分野では、快感と痛みの神経回路には共通点があるという研究結果も出ています。
クリトリスは解剖学的に膣や尿道とも近くにつながり、女性の生殖器の入口に位置する構造です。
そのため一部の研究者は「クリトリスには痛みを和らげる役割が隠れているのではないか?」と考えるようになりました。
特に妊娠中の女性は、腰痛や陣痛などさまざまな痛みに悩まされます。
しかし、お腹の赤ちゃんへの影響もあり、強い鎮痛薬を気軽に使うことはできません。
そこで頼りになるのが呼吸法やマッサージといった非薬物的な対処法(薬を使わない方法)ですが、それだけでは不十分なこともあります。
もし痛みを感じたときに自分の体から「痛み止め物質」を引き出す別ルートがあれば、まるで裏ワザのようで心強いでしょう。
そこで今回、フランス・ルーアン大学病院の産婦人科医マノン・ベストー=ブレテズ氏らは、クリトリスの“鎮痛機能”に注目した前例のない実施可能性を確かめる実験を行いました。
妊娠中の女性が自分の手で外部からクリトリス周辺に振動刺激を与え、痛みが和らぐかを見ようとしたのです。





























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