ヘビ自身の防御システムを抗毒素に利用する
ヘビ咬傷は、世界で毎年約10万人の命を奪い、数十万人に障害を残す深刻な問題です。
現在の抗毒素は、主にウマやヒツジなどへ少量のヘビ毒を繰り返し投与し、動物の血液から毒に反応する抗体成分を精製して作られます。
この方法は多くの命を救ってきましたが、製造に手間と費用がかかり、大量投与によってアナフィラキシーや血清病などの副反応が起こることがあります。
さらに、ヘビ毒は1つの物質ではなく、50~100種類もの毒タンパク質が混ざった複雑な液体で、その構成は種によって大きく異なります。
多くの種に効かせようとすると1種当たりの効力が下がることもあり、幅広さと強さの両立が課題でした。
そこで研究チームは、毒ヘビが自分の毒から身を守る仕組みに注目しました。
ガラガラヘビ属の血清(血液から血球や凝固因子を取り除いた液体成分)には、フェチュインAという血中タンパク質から派生した「FETUA」と呼ばれる一群のタンパク質があります。
その一部は、出血や組織損傷、血液凝固の異常を引き起こす「ヘビ毒内の酵素」を阻害します。
研究チームは、ニシダイヤガラガラヘビのFETUA-1からFETUA-5を遺伝子組換えで作製し、単独または複数を組み合わせて、毒によるタンパク質分解やマウスの皮下出血をどこまで抑えられるか調べました。
致死作用の試験では、FETUAとマウスの半数が死亡する量の3倍に当たる毒を37℃で30分間混ぜてから腹腔内へ投与し、48時間の生存を確認。
さらに市販のヒツジ由来抗毒素CroFabと必要量を比べ、別種のガラガラヘビ属や、遠縁のクサリヘビ科の毒にも作用するかを検証しました。
その結果、致死試験で単独使用したFETUA-2とFETUA-3では死亡を完全に防げませんでしたが、複数を適切に組み合わせると、ガラガラヘビ毒の致死作用を完全に防ぐ配合が見つかりました。
より詳しい結果と、組み合わせによって効果が高まった理由を次項で見ていきます。































