人類が酒飲みになったのはなぜ?
人類はあらゆるものをアルコールの材料にしてきました。
ブドウ、麦、蜂蜜、米、乳、樹液などなど、あげればキリがありません。
最古のアルコール飲料は、農業と同じくらい古いですが、人類がアルコール好きになる運命はもっと昔にありました。
お酒好きなのは何も人類だけではありません。
ショウジョウバエやレンジャク(スズメ科)は発酵した果物を好みますし、カリブ海に浮かぶセントキッツ島のベルベットモンキーはカクテルを盗み飲みすることで有名です。
私たちに近いチンパンジーもヤシ酒に酔っぱらう姿がよく目撃されています。
こうした動物たちの行動をたどれば、今から1億3000万年ほど前にさかのぼります。
それは実をつける種子植物が登場した頃です。
種子植物は動物たちの新たな食料となり、私たちの古い祖先である初期哺乳類にとっても恵みとなりました。
微生物も例外ではありません。
「サッカロミケス属」という果実を好む酵母が現れ、果物を完全分解する代わりに、部分的に分解してエタノールを作る能力を身につけたのです。
エネルギーの摂取には非効率的でしたが、果実を好む他の微生物にはアルコールが毒となるため有利に働きました。
また、サッカロミケスは熟した果実だけを食べるので、エタノールの匂いは食べ頃の果実を知らせてくれるサインとなります。
その内に、果実を好む哺乳類の中でも、エタノールの匂いを嗅ぎ分けて栄養豊富なものを見つけられる種が生存に有利になりました。
こうして、アルコールの味を好む性質が、生物学的な要素として私たち霊長類の古い祖先に加わったのです。