アルコールで人類が得たメリットとは?世界最強のお酒はなに?
ここで話を人類の時代まで一気に飛ばしましょう。
今から約1万年前、農業の誕生初期に、小集落で定住生活を始めた人々が、食料や飲料を発酵させる方法を見つけます。
これにより、余った食料(おもに穀類)の日もちが効くようになりました。酵母が活発になることで、食料を腐らせる細菌がいなくなるからです。
さらに、発酵によってビタミンB群をはじめとする様々な栄養素ができるため、食料がいっそう栄養豊富にもなりました。
発酵は液体の滅菌法にもなり、衛生状態の悪い初期の定住生活で、水より安全な飲み物が手に入るようになります。
また、アルコールの精神活性作用により、人数が増えて複雑になるグループの人間関係も円滑に進んだかもしれません。
では、人類がアルコールを作る発酵法をどうやって知ったのでしょうか?
これまでの研究によると、貯蔵していた穀類に酵母がたまたま混入し、誰かが発酵の秘密に気づいた可能性が一番高いとされます。
年代が確認できた最古のアルコール飲料は、中国の黄河近くの「賈湖(かこ)」という遺跡で見つかったものです。
約9000年前の壺の内部に、米とサンザシの実とブドウ、蜂蜜を混ぜて発酵させたものが入っていました。
他にも、5500年前のイランや3000年前のギリシャで、ビールとワインの走りのようなお酒が見つかっています。
その一方で、自然発酵には限界がありました。
酵母というのは徐々に自らの老廃物で腐食していくため、発酵させた飲料のアルコール度数は、最大でも15%ほどにしかなりません。
一般に親しまれるビールが4〜5%、ワインが13〜14%、日本酒や紹興酒が15〜17%なので、気分良く酔うには十分の度数でしょう。
しかし、人類は1000年ほど前に、発酵済みのアルコールを一度蒸発させて、再び凝縮し、さらに強いお酒に変える「蒸留法」を発明しました。
それにより、アルコール度数が40%を超えるバーボンやテキーラ、ウイスキー、ジン、ウォッカなどが誕生します。
そして、蒸留を70回以上繰り返して作り上げた地上最強のお酒が、アルコール度数96%を誇る「スピリタス」です。
ポーランドで作られたスピリタスは、火を近づけるとすぐに引火するほどで、取り扱い注意となっています。
地元民は飲むようだけでなく、体臭予防や消毒にも使っているとか。
アルコールとは、ほどよい距離でつき合っていきたいものですね。
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