がんを殺す細胞に、センサーと増殖スイッチを持たせる

がんの治療といえば、手術で切る、抗がん剤で叩く、放射線を当てる。
どれも、外から手を入れてがんを削る方法です。
けれども体の中にも、がんを見つけて殺す役目の細胞がもともといます。
免疫の主力であるT細胞です。
がんが大きくなってしまうのは、この見張り役が相手を見つけられないからでもあります。
それなら、見つけられるように作り変えてしまえばいい。
そうして生まれたのが免疫細胞を改造するCAR-T細胞療法です。
患者の血液からT細胞を取り出し、遺伝子を加えて、がん細胞の表面にある目印をつかむアンテナ(キメラ抗原受容体、CAR)を持たせます。
体に戻された細胞は、その目印を頼りにがんを探し出して殺します。
血液のがんでは、この方法が大きな成果を上げてきました。
ところが肝臓や肺にできる「かたまりのがん」(固形がん)が相手になると、同じ細胞がほとんど通用しません。
壁のひとつは、目印選びです。
健康な細胞にも同じ目印があれば、作り変えた細胞は正常な臓器まで襲ってしまいます。
その点、肝臓がんにはちょうどいいターゲットがありました。
がん細胞には大量にあるのに、大人の健康な組織には見当たらないタンパク質(グリピカン3、GPC3)です。
もうひとつの壁は、体に戻したあと、その細胞が増えて戦い続けられるかどうかです。
そこで研究チームは、免疫細胞に「増えろ」と伝える2種類の合図(インターロイキン15と21)を、細胞が自分で作り出せるように遺伝子を組み込みました。
攻撃相手を見分けるセンサーと、増殖を支える仕組みを組み込んだ、新型の改造T細胞(GPC3-CAR T細胞)です。
マウスを使った実験では、この仕組みを持つ細胞は、がんの増殖を抑え、マウスの生存期間を延ばす効果も確かめられています。
加えてこの増え続ける合図が暴走してしまった時に備えて、必要になれば作り変えた細胞だけを死なせられる非常停止の仕組み(iC9安全スイッチ)も備えていました。
残る問題は、この新型改造T細胞が人間にも効くかです。

























