手術も抗がん剤も効かなかった3歳児

今回の被験者となる少年が最初に病院を訪れたとき、がんはかなり進んでいました。
肝臓には差し渡し11センチのかたまりがあり、がんは両方の肺に散らばる転移も起こしていました。
血液を調べると、がんの勢いを映す目印(アルファフェトプロテイン、AFP)の値は、正常なら2〜12のところ40万を超えていました。
男の子は抗がん剤の組み合わせを変えながら3段階の治療を受け、肝臓のかたまりを手術で取り切り、肺の転移を取る手術も2回受けています。
それでも手術の直後にがんは戻り、右の肺に1センチほどの新しいかたまりが現れ、いったん下がっていたがんの勢いを示す値(AFP)も、1万台まで戻ってきたことが確認されました。
40万と比べると低下はしたものの、正常の上限は12ですから、異常に高い値であることには変わりがありません。
そこで少年は、新たに開発された「新型改造T細胞(GPC3-CAR T細胞)」を人に投与する初めての試験に加わりました。
試験に当たってはまず準備のために、3日間の抗がん剤で自分のリンパ球をいったん減らしました。
新しく入れる細胞が働く場所を空けるための前処置です。
そのうえで、少年自身の細胞から作った新型改造T細胞の1度目の点滴が行われました。
すると4週間後には、CT画像と血液検査で、腫瘍が縮んでいることが確かめられました。
がんの勢いを示す値(AFP)も、1万4200を頂点にして、7000、1590と下がっていきました。
さらに1回目から8週間後に、2回目の点滴が行われました。
そうして28日後(通算12週目)に撮影したCT画像をみると、肺の転移巣は傷あと(瘢痕)を残して消えていました。
がんの勢いを示す値(AFP)は、2回目の点滴のころには4.5まで下がって正常の範囲に入り、12か月後も正常のままでした。
この間、量を減らさなければならないような毒性も、免疫が暴走する激しい副作用(サイトカイン放出症候群)も起きていません。
研究者たちはこの結果について「完全奏効」あるいは「12か月の無病状態」と評価しています。

























