効き目が腫瘍にあつまった

効いたのに、全身に毒性が出ない。
がんの治療では、これは珍しい組み合わせです。
点滴した新型改造T細胞(GPC3-CAR T細胞)が体の中で何をしていたのかは、1回目の投入から4週間後に調べられています。
この時点では、肺のがんはまだ残っています。
ですがそのがんを調べると新型改造T細胞が腫瘍の中まで入り込んでいたことがわかりました。
しかも、がんを見分ける力を持つ新型改造T細胞は、血液の中よりがんの中のほうが多くいました。
点滴した新型改造T細胞は血流に乗って全身をめぐりますから、がんの中も血液の中も同じくらいの濃さになっていておかしくありません。
それが血液よりもがんの中で濃くなっていたということは、新型改造T細胞が目印を頼りに、狙った場所へたどり着いていたことになります。
そして、この細胞に作らせた2種類の合図は、血液の中では全体として低いままでした。
免疫が暴れるときに増える合図(インターロイキン1や6)も、血液の中ではわずかに上がるだけで済んでいます。
研究チームは、増殖の合図が自分と隣にだけ配られたからこそ、全身をこわさずに細胞が増えられたのかもしれないと考えています。
これほど効いた背景には、条件のよさもあります。
再発したがんが小さかったことと、再発した場所が肺だったことです。
静脈から入れた細胞が最初に通り抜けるのは肺なので、それが攻撃力を高め、副作用を抑えたのだろうと論文は見ています。
もっとも、今回の試験で効果が確かめられたのは3歳の少年のみという制限があります。
それでも、抗がん剤が効かなくなったかたまりのがんが、通院の点滴2回で1年間消えたままになった事実は動きません。
肝臓がんは、世界のがんによる死亡の原因として3番目に多い病気です。
今回狙った目印は大人の肝臓がんにも多く現れるため、研究チームは、同じ目印を持つ他のがんでも評価を進める必要があると述べています。
論文の連絡先著者であるシアトル小児病院のアンドラス・ヘッツェイ氏は、この細胞が肝芽腫に対する安全で効果的な治療になりうる証拠が得られたと述べています。
かたまりのがんには効きにくいという改造T細胞の壁を、新型は一人の子どもの体の中で乗り越えたのです。

























