山の草の「粘つく毛」に、小さな虫が捕まっていた

主役は、学名を Saxifraga candelabrum というユキノシタの仲間の草。
葉にも花びらにも茎にも、先が甘くべたつく小さな毛がびっしり生えています。
その毛には、ユスリカという小さな羽虫がよくくっついています。
研究チームがこの草の押し葉の標本を調べると、花の付いた45点のうち43点で、毛に虫が捕まっていました。
採られた時代も場所もばらばらな標本で、ほぼ毎回です。
たまたま虫が付いたのではなく、この草のいつもの姿だと研究チームは見ています。
ここで「くっつく」と「食べる」は別の話だ、と思った人がいるかもしれません。
そのとおりです。くっついただけでは、食べたことにはなりません。
給食を思い出してください。皿に載せただけでは、食べたとは言いません。
かんで飲み込み、体の栄養になって、はじめて「食べた」になります。
植物なら、捕まえる、消化する、体に取り込む、がすべてそろう必要があります。
研究チームは、この草でその全部を確かめました。
まずは、消化を確かめる実験です。
食虫植物が消化に使う酵素が毛にあるかを、酵素が働くと光る試薬で調べました。
毛が、黄緑色に光った。
食虫植物として有名なムシトリスミレの仲間と、同じ反応です。
一方、同じ場所に生える近い仲間の草は、同じ条件でも光りませんでした。
次は、取り込みを確かめる実験です。
研究チームは、目印を付けた窒素を含ませたショウジョウバエを、この草に与えました。
しばらくすると、この草の体には目印の窒素が増えていました。
同じように与えても、虫を食べない近くの草では増えません。
周りの土も調べましたが、目印の窒素は土からは来ていませんでした。
つまり虫の体の栄養が、毛から草の中へ移っていたのです。
捕まえて、消化して、取り込む。ダーウィンの予想どおり、この草は虫を食べていました(ダーウィンとその後の科学が見つけた答え)。

ただ、ここで気になることがあります。
虫を捕まえる毛は、花の枝にも生えています。
花粉を運んでくれる虫まで、捕まえてしまわないのでしょうか。























