花粉を運ぶ虫と「食べる虫」は、どう分けているのか

答えを先に言うと、この草は花粉を運ぶ虫をほとんど捕まえていませんでした。
花粉を運ぶ役に立っていたのは、ハエやハチの仲間の大きめの虫です。
この大きな虫たちは、毛にはめったに捕まりません。
毛に捕まるのは、おもに体の小さなユスリカでした。この小さな虫は、花粉運びにはほとんど役に立っていません。
多くの食虫植物は、花と虫を捕まえる場所を離して、この問題を小さくしています。
この草は離す代わりに、花粉を運ばない小さな虫だけを選んで捕まえる、という別のやり方を取っていたのです。
では、虫はどうやって毛のところまで来るのでしょうか。
使ったのは、ガラスの箱と白い網。
研究チームは花の咲いた株を、それぞれで囲みました。ガラスは匂いを遮り、網は見た目を遮ります。
虫が多く来たのは、網のほうだった。
虫を呼ぶのに、匂いへの反応が関わっている、ということです。
実際、花の香りには、虫が感じ取ったり引き寄せられたりすることにかかわると報告されてきた成分が含まれていました。

取り込んだ栄養の行き先も、調べられています。
目印の窒素がいちばん多くたまっていたのは花で、次が茎につく葉、いちばん少ないのが根元の葉でした。
この草は、一生に一度だけ花を咲かせる草です。
研究チームは、子孫を残す部分に栄養を多く回していると見ています。

遺伝子にも、食虫植物らしさがありました。
研究チームはこの草のゲノム(すべての遺伝情報)を読み、ほかの食虫植物と比べました。
すると、葉の形づくりや消化、栄養に関わる遺伝子が、別々に食虫になった系統どうしで同じ向きに変わっていました。
ここまでで、言えることと言えないことを整理しておきます。
言えるのは、この高山に育つ草が虫を捕まえ、消化し、栄養として取り込んでいる、つまり食虫植物だということです。
ユキノシタの仲間で今回、虫を消化する反応が確かめられたのは、この草です。同じ場所に生える近い仲間には、その反応が出ませんでした。
ほかのユキノシタの仲間まで同じかどうかは、この研究からは言えません。
枝が多く長い株ほど虫を多く付けていましたが、これは関連で、枝を増やせば捕れると示したわけではありません。
目印の窒素を比べた場所についても、同じ山の中で土の性質に少し差があったと研究チームは断っています。
研究チームは、虫を食べる草は花を咲かせる植物の中に、これまで思われていたより広くいるかもしれないと見ています。
1875年の予想の答え合わせが、ようやく今。植物は食事も返事ものんびりです。























