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乾燥地帯の植物は、「一見ランダムだが、どこをとっても密度が均一」な配置だった / Credit:Wikipedia Commons
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乾燥地帯で植物は「一見ランダムだが実は均一」な配置になると判明

2025.10.27 11:30:59 Monday

広大な乾燥地帯にまばらに生える植物の写真を見たことがあるでしょう。 サ

バンナや荒れ地を空から眺めると、緑の点々がぽつぽつと散らばり、まるでバラバラに生えているように見えます。

しかし、最新の研究により、「その散らばり方には隠れた法則があった」と判明しました。

一見ランダムに見える植物の配置は、実はどこをとっても密度が均一だったのです。

中国・南京大学(Nanjing University)の研究チームが発表したこの成果は、科学誌『PNAS』に2025年10月7日に掲載されました。

Plants Have a Weird Way of Arranging Themselves When There’s Not Enough Water https://www.zmescience.com/science/agriculture-science/plants-have-a-weird-way-of-arranging-themselves-when-theres-not-enough-water/
Causes and consequences of disordered hyperuniformity in global drylands https://doi.org/10.1073/pnas.2504496122

「ランダムに見えるが、実は密度が均一」という現象

一見ランダムに見える植物の配置。

その中に隠れていた“法則”は、物理学の世界から借りてきた言葉で「disordered hyperuniformity」と呼ばれています。

この現象は、「局所的にはバラバラでランダムに見えるけれど、広い範囲で見るとどこも驚くほど密度が均一」という不思議な空間パターンです。

たとえば、人で溢れかえる満員の部屋を想像してください。

人々はできるだけ自分の“パーソナルスペース”を保とうと、互いに少しずつ距離をとります。

当然、格子状に皆が整列することはありませんし、人と人とのそれぞれの距離は異なります。

一方で、部屋の角や中央に皆が密集することもありません。

個々の意思でパーソナルスペースを確保しようとするので、人は部屋全体に広がり、部屋のどの範囲を切り取っても、そこの密度は大きく変わらない状態になります。

それが「disordered hyperuniformity」のイメージです。

この”隠れた均一性”は、もともと物理学や材料科学の分野で、粒子の並び方や結晶構造を説明するために提案された概念であり、近年では、自然界のさまざまな場所で同じような状態が発見されています。

では今回、乾燥地帯の植物がどうしてこの不思議なパターンを作ることがわかったのでしょうか?

従来の生態学の研究は、主に「植物同士の距離」に注目していました。

「乾燥地では、分や栄養を奪い合わないよう、植物同士が離れて生えている傾向がある」と考えられてきたのです。

しかし中国の研究チームは、より広い視野で、「同じ広さのエリアごとに、植物がどのくらい分布しているか」という“密度の揺らぎ”に着目しました。

具体的には、高解像度の衛星画像から世界の乾燥地425地点を選び、各500×500メートルの範囲で植物の分布を詳細に解析。

その中で特に注目されたのが、50〜500メートルのスケールで密度の揺らぎが抑制される「disordered hyperuniformity」というパターンだったわけです。

実際、425地点中58地点(約1割)でこのパターンが検出され、アフリカ、アジア、オーストラリア、アメリカなど複数の大陸にまたがる乾燥地帯で確認されました。

つまり、世界中の乾燥地帯で見られる「ランダムに見える植物の散らばり」は、実は広いスケールで見ると驚くほど均一だったというわけです。

ではこのパターンはどうやって形成されているのでしょうか

次ページ乾燥地帯の植物はどのように「奇妙な配置」を作るのか

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