胸のサイズと自信の関係、なぜ今“測る”のか?

胸というのは、女性にとって特別な意味をもつ体のパーツです。
心臓や肺、胃など、人間の体には生きていく上で大事な器官がたくさんありますが、胸はただ体の一部というだけでなく、なぜか特別な存在として注目されます。
それは、「女性らしさ」や「母性」という目に見えない価値やイメージが、胸という部分に昔から強く結びつけられてきたからです。
実際に古代から現代にかけて、女性の胸をモチーフにした絵画や彫刻は世界中の美術館や博物館に数多く展示されています。
こうした芸術作品に女性の胸が繰り返し描かれてきた理由は、胸が単なる体の特徴を超えて、女性の象徴として文化的な意味を帯びてきたからでしょう。
だからこそ、現代でも胸というテーマは人々の関心を引きつけ、美容やファッションの世界でも非常に大きな注目を集めています。
雑誌の表紙やテレビ、インターネットでも、胸のサイズや形に関する話題は人気があります。
特に「胸が大きい女性は魅力的」とか「理想的なバストはこうだ」というイメージは、私たちの日常生活のなかで当たり前のように目にします。
でも、実際に女性たちが自分の胸に満足しているかといえば、実はそうでもありません。
世界40か国、1万8000人以上の女性を対象にした大規模な調査によると、自分の胸を「もっと大きくしたい」と願う女性は約半数の48%、逆に「もっと小さくしたい」と思う女性は23%、いまの自分の胸に満足している女性はたったの30%ほどでした。
言い換えれば、世界の女性の約7割が、自分の胸のサイズに対して何らかの不満や希望を抱えていることになります。
胸のサイズというのは、単に外見の問題ではなく、多くの女性にとっては自己評価や自信、心の問題とも深く関係しているのです。
では、そもそもなぜ胸の大きさがそこまで女性の自尊心や自信に影響を与えるのでしょうか?
その理由のひとつとして考えられるのが、「社会や文化が作り出す理想的な女性像」です。
例えば映画や漫画、雑誌などに登場する女性キャラクターの多くは、胸が大きいほど魅力的に描かれますよね。
こうしたイメージが繰り返されることで、「胸が大きい=女性らしい」という考え方が無意識のうちに人々に浸透してしまうのです。
すると当然のように、胸が大きい女性は社会的に肯定されやすくなり、自尊心(自分を認めて大切にする気持ち)が自然と高まる可能性があります。
逆に胸が小さい女性は「自分は女性らしくないのかも」といった不安や劣等感を持ちやすくなります。
これは個人の内面だけの問題ではなく、社会が作り出した理想的なイメージからくるプレッシャーも関わっているのでしょう。
これまで行われてきた多くの研究では、女性が胸のサイズについてどう感じているかという「主観的な満足度」をアンケートで調べるものが中心でした。
しかし、主観的な満足度というのはあくまで自分の感覚ですから、実際に胸が大きいかどうかを客観的に調べた上で、心理的な影響を調査した例は非常に少なかったのです。
そこでトルコの研究チームは、これまでのアンケート調査とはまったく異なる方法を採用しました。
それは、「実際の胸の大きさを正確に測定して、その数値と女性の自尊心との関係を分析する」という新しい試みです。
従来、胸の大きさを比較する場合、「Aカップ」「Cカップ」といったブラジャーのカップ数が一般的に使われてきました。
でも実は、カップ数というのはメーカーや国によって基準がバラバラで、同じ「Cカップ」でも実際のサイズにかなり差が出てしまいます。
そこで今回の研究では、「グロスマン=ラウドナー・ディスク」という専用の医療用測定器を使いました。
この器具は透明な円盤状で、胸の上に当てるだけで実際の胸の容積(体積)を直接測定することができます。
この方法を使えば、胸の大きさを主観的な感覚ではなく、客観的な「数字」で測定できるわけですね。
こうして研究チームは、胸の大きさという客観的なデータを使って、女性の自尊心との関連を科学的に調べました。
では、胸のサイズを数字で測ったとき、女性の自尊心と胸の大きさとの間にはどんな関係が見えてきたのでしょうか?