冷淡な策略家は「赦すこと」が難しい
日本語では、これから行う行為を認める「許す(許可)」と、すでに行った行為の失敗を責めない「赦す(赦免)」が区別されます。ですのでここでは、「赦す」という漢字を使っていきます。
さて、「ゆるせない…」という感情は、激しい怒りを経て、「仕返しをしたい」「復讐したい」という欲求へとつながります。
復讐は、他人の罪を罰したいという個人的動機に基づくもので、復讐する人に安らぎをもたらすために行われることが多いとされます。
そして「復讐心」は、性格特性に大きく関係します。
2014年、カナダの研究者らは、大学学部生219名を対象に性格特性と復讐心との関連を調査した論文を発表しました。
この研究によると、「マキャヴェリズム(Machiavellism)」や「サイコパシー(Psychopathy)」特性が高い人は復讐心が高く、正義感や法的な判断力も低いことがわかりました。
また、他人の異なる意見や行動に対する許容度が低く、他人への共感や思いやりも低いことが示されています。
マキャヴェリズム(Machiavellianism:権謀術数主義)は、計算や策略的な行動で他人を利用しようとする性格特性です。マキャヴェリストと呼ばれる人は、自己の利益や権力を追求するために他人を操ろうとする傾向があります。
サイコパシー(Psychopathy:精神病質)は、感情の鈍さ、共感の欠如、衝動的で反社会的な行動が特徴的な性格特性です。サイコパシー特性を持つ人はサイコパスと呼ばれ、しばしば冷酷で無慈悲であり、他人を傷つけたり欺いたりすることに抵抗感が少ない傾向を持ちます。そのため犯罪行動や不正行為に関与する傾向が高まります。
本研究を含む複数の研究は、これらの性格特性が「赦し」の妨げにつながっている可能性を示しています。そして、この関係をさらに深掘りしたのが、今回ご紹介する研究です。
セルビアのベオグラード大学(the University of Belgrade)の研究者らは、性格特性と「赦しの欠如」との関係に「怒りの反芻」がどう影響するかを確認しました。
結果、マキャヴェリズムやサイコパシー特性が高い人は、自分を不当に扱った人に対して、怒りを媒介として復讐を正義に昇華させる傾向がわかったのです。