怒りを反芻すると「復讐」は「正義」になる
研究者らは、一般募集した18歳から73歳までの629人(平均年齢は30.23歳、異なる生活基盤を持つ。さまざまな年齢・性別の人々)の参加者を対象に、性格特性と「赦し」の関係に「怒りの反芻」がどのような役割を果たすかを調査しました。
研究者によれば、「怒りの反芻」は4つの異なる次元を持ちます。
① 怒りの余韻: 引き金となった出来事について、どうすれば違った展開になったか、どう言えばよかったか、どうすればよかったかなど、繰り返し執拗に考えてしまうこと
② 怒りの記憶: 引き金となった出来事を何度も頭の中で再生することに夢中になること
③ 復讐の念: 報復を求めたり、悪いことをした相手への「仕返し」に執着すること
④ 原因究明: 不当な扱いを受けたことに対して、意味のある、あるいは納得のいく原因や説明を探すことに執着すること
性格特性と「赦し」、および「怒りの反芻」は質問票による評価が行われ、媒介分析が行われました。
媒介分析は、研究で2つの変数【AとC】の関係を調べる際に、中間的な変数【B】がどのように影響を持っているかを説明する統計的手法です。
ここでは、【性格特性と赦しの欠如】の関係において、変数である【怒りの反芻】がどう影響するのかが分析されたということです。
結果、性格特性と「赦しの欠如」の関係は、「怒りの反芻(①怒りの余韻、②怒りの記憶、③復讐の念)」により媒介されていることが示されました。
つまり、マキャベリズムとサイコパシーという性格特性が、他人との関係を対立的に捉えて怒りを引き起し、このことが「赦しの欠如」につながるという構図です。
論文の筆頭著者であるネデルイコヴィッチ氏は、次のようにコメントしています。
「マキャベリズムやサイコパシーが強い人は、時間の経過により怒りがなくなるどころか、長引く可能性が高いのです。
これは、怒りの引き金となった過去の出来事を反芻する傾向があるために起こります。怒りの記憶が繰り返し頭に浮かび、状況を解決し、正義を達成する手段として復讐を考えるというわけです」
本研究は、セルビアのデータに基づくものですから、日本人に完全に適用するのは難しい点があるかもしれません。
しかし、「怒りを引きずり続ける人」の心理や、自分の中にある「赦せない」という感情を理解するうえでは、参考にしていただけるのではないでしょうか。
何かムカつく出来事があったとき、何度もそのことを思い返し、報復しなければ悪が野放しになる、というような考え方をしてしまう人は注意が必要です。
そのような人たちは、ここで挙げたような危険な性格特性を持つ可能性があり、また怒りを反芻でストレスを溜めたり時間を無駄に使ってしまう可能性があります。
ネットなどで炎上騒ぎがあった際にしつこく粘着する人も、こういった傾向が考えられます。
自分が過去にされた不条理な行為とよく似たネットの炎上騒動を見かけたことで、過去の怒りや復讐心が反芻され、「赦せない、報復こそ正義」という思考に凝り固まっていってしまうのです。
怒りが制御できないと、人生を台無しにしてしまう可能性があります。ムカつくことがあっても、そのことを何度も思い返さない、相手を悪と捉え報復することが正義のように考えない。
これが重要なことでしょう。
【編集注 2023.1.30 17:45】
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