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もっともネックになるのは近親交配
全面的な核戦争や、巨大小惑星の衝突など、地球上の人類の多くが死滅した世界を想像するのは、さほど難しいことではありません。
しかし、仮にそんな世界に生存者がいたとして、人類という種を存続させるためには何人の人間が必要なのでしょう?
いくつかの研究が、こうした問題に取り組んでいます。
「人口が数百人程度あれば、何世紀にもわたって人類は生き延びることが可能でしょう」
米国ポートランド州立大学で初期の人類文明や宇宙移民に関する研究を行うキャメロン・スミス氏は、そのように述べています。
スミス氏によると、人類が農耕をはじめた新石器時代初期(最終氷期の終わった約1万2千年前)、人類は数百から千人程度の小さな集落を作って世界中に散らばっていました。
この集落は基本的には独立した集団でした。
文明が崩壊した世界では、食料のほとんどを輸入に頼り、電気に大きく依存している大都市はもっとも脆弱な地域になると考えられます。
そのため、生き残った人々は都市を離れ、資源を求めて散らばっていくことになるでしょう。
その結果、数百人規模の集落が各地に生まれ、初期人類と同様の状況になると考えられます。
初期の人類でも、集落間でわずかに人の移動があり、他集落との交配や婚姻がありました。終末世界でも同様のことは起きるでしょう。
ただ、少ない人数で繁殖を維持しようとした場合、その集団は大きな問題に直面します。
それは近親交配です。
近親交配がもたらす影響は、16世紀から17世紀にかけてスペインを支配したハプスブルク王朝の没落から見ることができます。
ハプスブルク家は高貴な血統を保つために、近親婚を繰り返していました。
その結果、ハプスブルク王朝は1700年に亡くなったカルロス2世を最後として滅亡します。
このカルロス2世は不妊症で、数々の先天性疾患を患っていました。
彼は顔が変形し咀嚼に難があって、常によだれを垂れ流していたといわれています。また、知的障害も併発していたようです。
現代の研究は、これらの原因が何世代にもわたり繰り返された近親交配の影響だったと考えているそうです。
これは人数が減少し、繁殖の選択肢が限られた人類にも起こりうる可能性があります。
これを避けるためには、十分な遺伝的多様性を保つ必要があり、十分な数の繁殖年齢に達した異性の個体(有効個体数)が必要となります。