惑星プロキシマbへの移民船には何人必要か?
厳密に終末世界の生き残りを考えると、どのような惨事で人が減ったのか? 利用可能な土地はどの程度あるのか? など複雑な要因が絡んできます。
そこで人口規模のみに絞ってシンプルに問題を考えるために、人類は宇宙へ逃れたと仮定してみることにしましょう。
このとき、世代を超えて宇宙を旅する移民船には、最低何人の乗組員が必要になるでしょうか?
フランス・ストラスブール大学の宇宙物理学者のフレデリック・マリン氏は、2018年に科学雑誌『Journal of the British Interplanetary Society』でそんな研究を発表しています。
マリン氏が研究したのは、太陽系にもっとも近い恒星であるプロキシマ・ケンタウリを周回する居住可能惑星プロキシマ・ケンタウリbへ移住する場合の、必要最低人数です。
プロキシマbが本当に人類の住める惑星なのかはわかりませんが、現代の技術でこの惑星へ移動した場合、かかる期間は6300年です。
マリン氏は、少ない人数で人類が繁殖した場合の不妊症、近親交配、病気や事故による突然死などさまざまな要因を考慮し、モンテカルロシミュレーションを用いて、この長い旅を達成できる最少人数を計算しました。
結果、その人数は98人でした。
この研究で考えられている乗組員は、49組の血縁関係のない繁殖可能なペアです。
また、集団の遺伝的多様性を健全に維持するためには、乗組員の繁殖を監視・制限する必要があるとしています。
これは厳密に管理できる場合の最少人数であり、2021年2月に発表された同研究チームの後続研究では、遺伝的多様性を無理なく安全に維持できる可能性が高いのは500人だと報告されています。
これは、たとえていうならば、旅客機がニューヨークへ向かう際、滑走路に到着できるギリギリの燃料で飛ぶのか? という問題に似ています。
計算上の必要最低人数は、理論的なギリギリの人数です。普通、飛行機は余裕を持って燃料を積み込みます。
当然終末世界を生き抜く場合にも、ギリギリの人数では生存できる可能性がかなり制限されるでしょう。
そう考えると、最新の研究で報告された500人というのが、人類の遺伝的多様性を維持する最低人数だと考えるべきかもしれません。
もちろん、繁殖可能な年齢で男女比率は均等である必要があります。
ただ、宇宙船のシミュレーションは、最初のスミス氏の例のような他集落間での人の移動は一切ないため、条件が厳しくなっています。
地上に複数の集落があり、多少は人の入れ替わりがある場合は、これより少ない人数も可能かもしれません。
何にせよ、終末世界を生き抜く人類の一員にはあまりなりたくありませんね。