「無響室」とはどんな世界なのか?
オーフィールド研究所は1970年に建てられ、当初は「サウンド80」という名前のレコーディングスタジオとして使われていました。
あのボブ・ディランやプリンスもこの場所で録音を行っています。
その後、スタジオは1975年以降に、音響と照明のデザインサービスを提供するオーフィールド研究所の管理になりました。
そして1994年にはスタジオ内に音響研究所が増築され、「無響室」が設置されるに至ります。
無響室とは、外部の音を完全にシャットアウトしながら、内部の音の反響を極限まで吸収するように設計された部屋のことです。
それを可能にする仕組みとして、室内にはくさび形の吸収材が壁・天井・床の全方面に敷き詰められています。
オーフィールド研究所の無響室では、これにより音の99.9%を吸収できるようになりました。
2021年に実施されたテストでは、室内の環境音レベルは驚異のマイナス24.9デシベルを記録しています。
一般に私たちの耳が聞き取れる最小音の限界レベルが0デシベルです。
これ以下というと「無音」のように思われるかもしれませんが、実はそうではありません。
ただ人間の耳で聞こえないだけで、0デシベルより小さくても音は鳴っています。
そしてこれはデシベルという値の計算上の都合ですが、0.00002Pa(パスカル)より小さい音圧に対してはマイナスデシベルで表現されます。
そのため、私たちにとってマイナス24.9デシベルとは、究極の沈黙の世界なのです。
こうしてオーフィールド研究所は「地球上で最も静かな場所」としてギネス世界記録に認定されました(Guinness World Records)。
これと同様の無響室は、アメリカのマイクロソフト本社にもあり、ここではマイナス20.35デシベルが記録されています。
(ちなみにマイクロソフトの無響室は主に、マイクやヘッドホンなどの音響機器やキーボードやマウスなどのコンピューター機器から出る雑音を検査するために使われます)
では、無響室では音がどのように聞こえるのでしょうか?