有害な雑草「ラシャナス」は、定期的に草刈りされることで「スーパー雑草」になる
「ラシャナス(学名:Solanum elaeagnifolium)」は、主にアメリカの中・南部からメキシコに分布するナス科ナス属の多年草です。
一見、紫色の花を咲かせる美しい植物に思えるかもしれません。
しかし実は、水分がほとんどない痩せた土壌でも育ち、種子だけでなく根茎(こんけい:地中を這う根に見える茎)でも広がる厄介な雑草です。
長さ1cm未満の根茎でも再生することがあり、草刈りで表面的に刈り取るだけでは、取り除くことは不可能です。
またラシャナスの花や果実は、主にアルカロイドを含む毒素を持っています。
しかもこのラシャナスはたくさんの細かいトゲに覆われており、人間や動物がトゲに刺さると皮膚炎を発症することがあります。
これらの特徴からラシャナスは、アメリカやオーストラリア、南アフリカなど様々な国で、「有害な雑草」と見なされています。
そして多くの農家は、生存力の高いラシャナスに対して、地上に出た葉の部分だけを定期的に草刈りすることでなんとか対処してきました。
しかし、10年以上ラシャナスの研究を続けるカリヤット氏は、ある時、定期的に草刈りされたラシャナスと、そうでないラシャナスには違いがあることに気づきました。
そこで2018年、カリヤット氏ら研究チームは、5年にわたって草刈りされたラシャナスのデータを集めることにしました。
その結果、彼らは、継続的に草刈りされたラシャナスが、有毒性と生存能力を向上させた「スーパー雑草」へと変化することを発見しました。
まず、定期的に刈り取られていたラシャナスは、放置されたラシャナスに比べて、主根がずっと深く伸びており、約1.5mの深さにまで到達していると分かりました。
ラシャナスは何度も草刈りされることで、そのような試練で死んでしまわないよう根を深く張り巡らし、しぶとく生き残ろうとしたのです。
また、刈られ続けたラシャナスは、復活した時に、より多くのトゲと、より強い毒性の花や果実を生み出すようになりました。
研究チームは、これらトゲや毒素が、イモムシの捕食に抵抗するための手段になっていると考えています。
実際、「刈られ続けたラシャナス」を食べるイモムシは、「放置されてきたラシャナス」を食べるイモムシに比べて、多くの量を食べることができず、体重が軽くなっていました。
さらに草刈りされたラシャナスの方は、「すぐに発芽する種子」や「発芽に時間のかかる種子」など、発芽のタイミングにばらつきがある種子を作るようにもなりました。
そしてこのばらつきにより、植物としての生存率は向上していました。
仮に不利な環境条件や病害虫の被害が生じたとしても、発芽のタイミングが異なるので、全滅するリスクを低減できるのです。
これらの結果が示すのは、ただでさえ厄介な雑草であるラシャナスは、人間が継続的に草刈りすることで強化され、「スーパー雑草」へと変化するということです。
このことを考えると、人間が行う中途半端な雑草対策は逆効果だと分かります。
ここまで極端な雑草は珍しい存在ですが、やはり雑草と呼ばれる植物は生命力の強いものが多くいます。
子供の頃、草刈りで「雑草は根っこから抜きなさい」と言われてダルかった人は多いでしょうが、雑草は中途半端に扱うと大変なことになるかもしれません。
ラシャナスって、ワルナスビと同じもの???