オーガズムの瞬間に「色が見える人たち」の脳内で何が起きているのか?
オーガズムの瞬間に「色が見える人たち」の脳内で何が起きているのか? / Credit:clip studio . 川勝康弘
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オーガズムの瞬間に「色が見える人たち」の脳内で何が起きているのか?

2025.06.30 21:00:01 Monday

オーガズムを迎えた瞬間、目の前にカラフルな光が弾けたり、まるで万華鏡の中に飛び込んだかのような幻想的な映像が広がる――そんな特別な脳の現象『性的共感覚』が、カナダのケベック大学モントリオール校(Université du Québec à Montréal, UQAM)で行われた研究によって初めて体系的に確認されました。

研究チームは、性的共感覚を持つ人々が実際に存在することを突き止めると同時に、この不思議な現象は単なる脳の「配線ミス」ではなく、感情や深いリラックス状態と密接に関係している可能性を明らかにしました。

性的共感覚者の脳では、快感や感情を司る領域が通常より敏感である可能性が高く、オーガズム時の感情が極限まで高まったときに、感覚の境界線が曖昧になって色や映像が現れるというのです。

この現象は、脳が感情を最大限に高めたときに初めて現れる『究極の感覚融合』と言えるでしょう。

しかしなぜ一部の人だけがオーガズムの絶頂で「色」を見ることができるのでしょうか?

研究内容の詳細は『SSRN』にて発表されました。

Altered Consciousness in Sexual Synesthesia https://dx.doi.org/10.2139/ssrn.4887264

「音に色、文字に味」――不思議な共感覚が性的快感にも

「音に色、文字に味」――不思議な共感覚が性的快感にも
「音に色、文字に味」――不思議な共感覚が性的快感にも / Credit:clip studio . 川勝康弘

音楽を聴いているとき、ふとその曲に「色」を感じたり、「風景」が浮かんだりするような経験をしたことはないでしょうか?

あるいは、特定の言葉や人の名前を聞いたときに、なぜか「味」を感じたりする人もいるそうです。

こうした、ある感覚が別の感覚と結びついてしまう不思議な現象は『共感覚(シナスタジア)』と呼ばれています。

共感覚を持つ人たちの多くは、幼少期のころから自然にこうした体験をしており、いったん身についた感覚の結びつきは生涯を通じてほぼ変わらないと言われています。

実際、こうした先天的な共感覚は、人口の約4%もの人が持っていると推定されています。

しかし、すべての共感覚がずっと持続的に起こり続けるわけではありません。

中には、特定の状況や精神状態に応じて一時的に起こる『状態依存型の共感覚』という現象も知られています。

例えば深い瞑想状態に入ったとき、音楽に没頭しているとき、または薬物を使用したときにのみ共感覚が引き起こされるケースがあり、普段は共感覚を持たない人でも体験することがあります。

さらに、ごく一部の人たちは、性的な興奮が高まった瞬間やオーガズムの最中に限って、鮮やかな色や光が視界いっぱいに広がるという特別な共感覚を体験していると言われています。

この現象は『性的共感覚』と呼ばれ、古くからごく一部の体験談として語られてきました。

例えば「絶頂を迎えると万華鏡のような映像が広がった」「まぶしい光や虹色の波が見えた」という証言が、わずかながら残されています。

とはいえ、こうした性的共感覚は、これまで本格的な科学研究の対象とはされず、医学文献においてもごく少数の個別例やエピソードが語られる程度で、謎に包まれた現象でした。

そこで最近になって、ある研究チームが初めて、この性的共感覚について本格的な科学的調査を行いました。

この研究の目的は、「オーガズムの瞬間に色や映像が見える」という体験が本当に存在するのかどうかを確認し、それが起こる状況や条件を探ることです。

また、一般的な共感覚とはどのような違いがあり、人の感情や意識状態とどのように関わっているかについても調べました。

果たして、性的共感覚は単なる内の神経配線が偶然絡み合っただけの現象なのでしょうか、それとももっと深い心や感情の働きが関わっているのでしょうか?

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