オーガズムの瞬間に「色が見える人たち」の脳内で何が起きているのか?
オーガズムの瞬間に「色が見える人たち」の脳内で何が起きているのか? / Credit:clip studio . 川勝康弘
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オーガズムの瞬間に「色が見える人たち」の脳内で何が起きているのか? (3/3)

2025.06.30 21:00:01 Monday

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脳はなぜ「快感」を「色」に変えるのか――性的共感覚の謎を追う

脳はなぜ「快感」を「色」に変えるのか――性的共感覚の謎を追う
脳はなぜ「快感」を「色」に変えるのか――性的共感覚の謎を追う / Credit:clip studio . 川勝康弘

今回の研究によって、「性的共感覚」は実際に存在する現象であり、単なるの配線ミスではなく、心や意識が深く関係している可能性が示されました。

これまで性的共感覚は、ほんの一握りの人だけが経験する特殊な現象だと思われてきましたが、今回初めて科学的に調べてみると、そこには驚くほど繊細で複雑なメカニズムがあることがわかりました。

研究者たちは、なぜオーガズムの瞬間に色やイメージといった視覚的な体験が起こるのか、その理由について2つの重要な仮説を考えています。

1つ目は、脳の中の神経伝達物質(脳内の化学物質)に対する感度が人よりも高いという説です。

私たちの脳では通常、感覚や感情を司るためにセロトニンやオキシトシンなど様々な化学物質が働いていますが、性的共感覚を持つ人たちはこれらの物質に対して敏感で、わずかな刺激でも強い反応を示すのではないか、というのです。

実際、性的共感覚で体験される強烈な幸福感や色鮮やかなヴィジョンは、薬物で誘発される幻覚体験に似ていることもわかっています。

つまり、脳の中の化学物質がちょっとしたきっかけで過剰に作用して、通常ではありえないような「感覚の融合」を引き起こしている可能性があるのです。

2つ目の仮説は、脳の感情を司るエリア(「辺縁系」や「島皮質」)が、通常よりも活発に反応しやすいという説です。

辺縁系は私たちの感情や記憶をコントロールする重要な部分であり、特に島皮質は、身体感覚や感情を統合する役割を担っています。

性的興奮が高まったり、愛情や信頼感が強まったりすると、このエリアが激しく反応します。

そのため、性的共感覚を持つ人々では、この感情を処理する脳の働きが人一倍強力で、感情と視覚などの別々の感覚が混ざり合い、カラフルな光やイメージが現れてしまうのかもしれません。

この説は、「強い愛情やリラックスした状況でないと性的共感覚は起きない」といった参加者の声とも一致しています。

この2つの仮説は互いに対立するものではなく、むしろ両方が同時に起きている可能性も十分に考えられます。

つまり、脳内の化学物質に敏感であることと、感情を司る領域が活発に反応すること、この二つが組み合わさって、初めて「性的共感覚」という不思議な現象が生み出されるのかもしれません。

もちろん、この研究はまだ最初の一歩に過ぎません。

実際に参加してくれたのは16人と人数も限られていて、その体験も本人の主観に基づいているため、結果を誰にでも当てはめられるかどうかは、今後の研究が必要です。

ですが、参加者たちが語った驚くべき体験は非常に共通しており、この現象が決して偶然ではなく、人間の脳が持つ未知の可能性の一端を示しているのは確かです。

性的共感覚の謎がさらに解明されれば、私たちが「快感」や「意識」を感じる仕組みについても新たなヒントが得られるでしょう。

人間の脳にはまだまだ私たちが想像もできないような、不思議な世界が隠されているのかもしれません。

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オーガズムの瞬間に「色が見える人たち」の脳内で何が起きているのか? (3/3)のコメント

ゲスト

そういう感覚はないですけど、持ってるとめちゃくちゃロマンチックな思いが出来そうではありますね。
思い出の中の経験もそういう光景付きで記憶に刻まれているわけでしょう?
かなり人生楽しんでる系だと思います。
…お姉さん来た、お姉さん来たよ。

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