パズルは解けるけれど「タダ飯」を好む
この結果を聞いて、「えっ、動物はみんな楽して食料を得たいんじゃないの?」とお思いの方が多いでしょう。
ところが、これまでの研究により、哺乳類や鳥類は、タスクの結果としてエサを獲得する方を好むことが分かっています。
具体的な実験では、イヌ、ブタ、クマ、ヤギ、マウス、ハト、およびヒトを含む霊長類を対象に、”自由に食べられる食事”と”パズルを解かないと食べられない食事”を用意したところ、すべてのグループが後者を選択したのです。(もちろん、好みに個体差はあります)
これを心理学用語で「コントラフリーローディング効果(Contrafreeloading、以下、CFL)」と言います。
しかし、1971年に発表された小規模研究では、ネコだけがCFLを示さず、タダ飯を好むことが示唆されていました(Animal Learning and Behavior, 2013)。
そこで本研究チームは、この結果を確かめるべく、17匹のネコを対象にCFL実験を実施。
室内で飼われているネコの前に、エサの乗ったただのプレートと、パズルを解かないとエサが手に入らないプレートを置き、どちらを選ぶか観察しました。
その結果、ほぼすべてのネコが、自由に食べられるタダ飯の方を選んだのです。
うち8匹は、パズルの方には一度も触れることなく、タダ飯にありついていました。
こちらが実験の様子。
研究主任のミケル・デルガド氏は「パズルの方を選んだネコもいたが、大半はただのプレートからエサを食べていました。
それぞれのネコに装着した活動センサーを見ると、最も元気な個体でもタダ飯の方を選んでいたので、パズルを選択しないのは、彼らが怠け者だからではないでしょう」と述べています。
また、性別、年齢、パズル経験の有無にかかわらず、ネコたちはタダ飯を選ぶ傾向にありました。
ネコがパズルを選択しない理由については謎のままです。
彼らが賢いのは周知の事実ですし、パズル型のプレートのみを与えると、簡単に解いてエサを食べることが分かっています。
仮説の一つとして、デルガド氏は「ネコが獲物を待つように進化したことが関係しているのではないか」と推測します。
霊長類や哺乳類の多くは、自分たちの足で木の実や獲物を探しまわりますが、ネコは獲物を待ち伏せする動物です。
そのため、パズルのような能動的な採餌法は好みでないと考えられます。
あるいは、ネコを飼っている方ならお分かりのように、ネコは飼い主とあまりじゃれ合わず、ひと所に鎮座して、エネルギーを節約することの多い動物です。
ネコからすれば、パズルは簡単に解けるけれど、「こんな子供だましのお遊びには付き合ってられない」と思っているのかもしれません。