「自分を否定する心の中の言葉」はいつも悪者?
人は誰でも、心の中で自分に向けて言葉をかけています。
その中で、「自分は駄目だ」「また失敗するに決まっている」といった、自分を下げる方向の内なる言葉が、ここでいう「自分を否定する心の中の言葉(ネガティブなセルフトーク)」です。
長い間、こうした言葉は「自信を削るから悪いもの」と考えられてきました。
しかし近年の心理学研究は、この見方が必ずしも正確ではないことを示し始めています。
たとえば、2021年の研究では、fMRIと問題解決テストを組み合わせて、内なる言葉の種類が脳の働きや成績にどのような影響を与えるかが調べられました。
ここで比較されたのは、単なる「前向き/後ろ向き」な気分ではなく、自己尊重(self-respect)と自己批判(self-criticism)という、より具体的な自分への語りかけ方でした。
研究によると、自己批判、つまり自分を否定する方向の内なる言葉を用いた場合、最初の成績が特別に良くなるわけではありませんでしたが、次のテストでは成績が向上する傾向が見られました。
論文要旨では、その背景として「自信が下がる状態」が、注意力や内的動機づけを高める方向に働いた可能性が示唆されています。
一方で、自己尊重、つまり自分を肯定する方向の内なる言葉は、計画や判断といった実行機能を支える働きを強める可能性がある反面、実力以上の自信、いわば過信につながる面もあり得るとまとめられています。
この研究が示しているのは、「肯定は良くて、否定は悪い」という単純な話ではありません。
内なる言葉は、種類によって効き方が異なり、場面によって利点と落とし穴が分かれるということです。
では、私たちの心の中から聞こえてくる「自分を否定する言葉」を上手に活用するには、どうすれば良いのでしょうか。





























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