巨大陥没穴「天坑」は、絶滅危惧樹木を守る避難所だった
石灰岩が広がるカルスト地域に形成される、巨大で深い陥没穴のことを、中国では「天坑」と呼ぶことがあります。
そして中国南西部の天坑では、切り立った崖の底に、暗く湿った森林が広がっています。
地表よりも涼しく、気温や湿度の変化が抑えられるため、暑さや乾燥に弱い植物にとっては天然の避難所になっています。
今回、研究チームが調べたのは、中国南西部の石灰岩地帯に分布する絶滅危惧樹木「Magnolia aromatica」です。
研究チームは、染色体の端に近い領域までつながった高精度のゲノム配列を作成し、天坑の内外にある26集団112個体のゲノムを比較しました。
その結果、マグノリア・アロマティカは大きく4つのグループに分かれ、そのうち2つは広西チワン族自治区の楽業天坑群と関係していました。
全体として見ると、天坑に由来する系統を含む集団(天坑内外の集団)は、遺伝的な多様性も極端に低くはなく、有害な変異の量も特別に高いわけではなく、ちょうど中間くらいの状態でした。
つまり、天坑の周辺にいる樹木は、遺伝的な多様性をある程度保ったまま生き残っており、極端に弱っているわけではないことが分かります。
一方で、天坑の中にいるグループでは、光合成などに関わる遺伝子に変化が見られ、環境に合わせた特徴が進んでいました。
実験でも、天坑由来の苗木は強い光では弱いものの、暗めの環境ではよく育ちました。
つまりこの樹木は、天坑という特殊な環境に「逃げ込んで生き延びる」だけでなく、その環境に合った性質も少しずつ身につけていたと考えられます。
























