なぜ致死性ウイルスが蔓延したのか?
後の調査で、状況がどれほど深刻かが明らかになっていきました。
2025年11月、野外で暮らしていたアオコンゴウインコの様子に異変が見られたため、ICMBioは野生化した個体群から11羽を捕獲し、検査を行いました。
その結果、11羽全員が陽性であることが判明しました。
放鳥されたおよそ20羽のうち、野外で生き残っていたのがこの11羽とされており、そのすべてが感染していたことになります。
これは、野生復帰プロジェクトの中核となる野外個体群が、事実上ウイルスに“丸ごとつかまれてしまった”状態だと言えます。
さらに、問題は野外だけにとどまりませんでした。
ブラジル・バイーア州にある繁殖センターで飼育されていたおよそ90羽のアオコンゴウインコを検査したところ、そのうち21羽が陽性であることが分かったのです。
野生に出ていない、施設の中の鳥たちにもウイルスが広がっていたことになり、プロジェクト全体への打撃はさらに大きくなりました。
では、なぜここまで感染が広がってしまったのでしょうか。
ICMBioとブラジル環境省は、アオコンゴウインコを管理する民間企業BlueSkyが運営する繁殖施設に、重大なバイオセキュリティ(感染対策)の不備があったと指摘しています。
調査によると、施設の内部は「非常に汚れて」おり、乾燥した鳥の糞が床や設備に積もったままになっていたといいます。
また、作業員がサンダルやTシャツ、短パンといった軽装で鳥を扱い、防護具を十分に着けていなかったことも問題視されました。
出入りや作業のたびに、衣服や靴などを介してウイルスが施設内で広がった可能性があります。
こうした状況を受けて、ブラジル環境省とICMBioは、BlueSkyに対して180万レアル(約5200万円)の罰金を科すと発表しました。
ICMBioの気候・疫学緊急対応の責任者であるクラーウジア・サクラメント氏は、「もしバイオセキュリティが厳格に守られていれば、陽性個体が1羽だけの段階から、11羽すべてにまで増えることはなかっただろう」と述べ、強い危機感を示しています。
アオコンゴウインコは、1種類だけで独自の属を構成する特別な鳥です。
その未来が、ひとつのウイルスと人間側の管理の甘さによって再び揺らいでいるという事実は、世界中の保全関係者にとって重い警告となっています。
アオコンゴウインコの青い羽は、これからもブラジルの空を舞い続けるでしょうか。
それは今回の失敗から何を学び、どこまで本気で守ろうとするのかという、私たち人間の選択にかかっているのかもしれません。
























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