クリスマスが「恐怖」に変わるまで
まず前提として、「クリスマス恐怖症」という名前の診断名が公式に存在するわけではありません。
ただし、ホリデーシーズンにありがちな行動(パーティー、買い物、家族行事)が、すでに知られているさまざまな恐怖症や不安障害を一気に刺激してしまうことは、専門家たちが指摘しています。
イギリスの不安症支援団体「Triumph Over Phobia(TOP)」の担当者は、祝祭シーズンの典型的な行動が、多くの人にとって「かなりきつい負荷」になり得ると述べています。
たとえば:
・クリスマスパーティーや親族の集まりは、社会不安(対人不安)を抱える人にとっては、地獄のような場になり得ます。大勢の前で話す、初対面の人と会話する、笑顔で振る舞う。そうした「当たり前」が、強い恐怖や動悸につながります。
・冬場のパーティー会場や電車、ショッピングモールは、閉所恐怖症の人にとって息苦しい空間です。逃げ道が見つからないように感じて、パニックに近い状態になることもあります。
・食べ飲みが中心のシーズンは、嘔吐恐怖症(吐くことへの恐怖)の人にとっても大きなストレスです。「人前で気分が悪くなったらどうしよう」「酔いつぶれた人を見たくない」といった不安が、イベントそのものを避けさせます。
・にぎやかな繁華街のイルミネーションを見に行くことや、混雑したショッピングモールでの買い物は、広場恐怖(開けた場所や人混みへの恐怖)を強く刺激します。
社会不安障害だけを見ても、アメリカでは生涯でおよそ8人に1人が経験するとされ、過去1年に限っても14人に1人ほどが症状を感じています。
閉所恐怖や嘔吐恐怖も、決して珍しいものではありません。
さらに、近年じわじわ注目されているのが「家族との時間」そのものへの心理的負担です。
海外の心理学者たちは、家族と過ごすとき、私たちは子ども時代のパターンに“逆戻り”しやすいと指摘しています。
・兄弟げんかの構図がそのまま再現される
・親との力関係や「役回り」が昔のままに戻る
・自分だけが「できない子ども」に戻ったように感じてしまう
こうした“退行”は、ごく一般的な防衛反応です。
しかし、ここに仕事の疲れや年内の締め切り、経済的な負担といった現代的なストレスが重なることで、「ホリデーシーズン=ストレスの塊」と感じる人が増えていると考えられます。
周りが「一年で一番楽しい時期!」と盛り上がる中で、自分だけが「一年で一番しんどい時期…」と感じる。
このギャップこそが、いわゆる「クリスマス恐怖症」を、より孤独でつらいものにしてしまうのです。


























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