犬は匂いで「景色」を楽しんでいる?
犬が薬物捜査や人探しの役を担うのには十分な理由があります。
犬の嗅覚は人の1万倍と言われており、刑事ドラマで見るような、服の匂いだけで行方不明者を探し出すことも実際に可能です。
専門家は「人の鼻はカレーの中のサフランなら分かるが、犬は競技用プールに落とされたサフランを嗅ぎ分けられる」といいます。
なぜこれほど嗅覚が鋭いのかというと、犬の鼻には、上・中・下に分かれた3つの主なルートがあります。
鼻孔から吸い込まれた空気はこれらのルートを通るのですが、上部ルートが匂いの検出に特化しているのです。(残りは呼吸など)
上部ルートは、人の鼻と違って、迷路のごとく複雑に入り組んでいます。
これは匂いを嗅ぐ表面積を大きくすることで、匂いの微細な部分まで嗅ぎ分けるためです。
また、迷路のような構造は、外の匂いが消えた後もその匂いを保持するのに役立ちます。
そして、鼻孔から入ってきた空気はこの中を通り、上皮細胞層にある約3億個の嗅覚受容体まで運ばれ、匂い成分が嗅ぎ分けられるのです。
嗅覚受容体が受け取った情報は、脳の嗅皮質に伝達されますが、そのサイズは人の嗅皮質の約40倍に達します。
そのため、匂いの記憶も優れており、それぞれの場所と匂いを結びつけることで、自分の通った道、行った場所を覚えておけるのです。
それから、犬は2つある鼻孔を別々に動かすことができ、どちらにより多くの匂いが検出されたかによって、匂いが発する方向を見分けています。
それほど鼻の効くため、犬は身の周りの経験を視覚よりはるかに嗅覚に頼っています。
人や場所の匂い、風に運ばれてくる遠くの香りは犬にとって、万華鏡のように移りゆく立派な「景色」です。
私たちが視覚で外の景色を楽しむように、犬は匂いで景色を楽しんでいます。
しかし、閉ざされた車の中の匂いは変わりばえがせず、同じ景色を何度も見せられているようなものです。
対して、窓の外は、風が次々と新たな香りを運んでくる、まさに匂いのテーマパーク状態となっています。
加えて、匂いによって今まさに経験している世界の全体像を作り上げることは、犬の自己コントロール感を高めると言われます。
鼻よりも目が発達した私たちは、窓の内側からでも十分に景色を楽しめますが、犬は直接匂いと触れあわなければならないのです。
【注意】
車の窓から犬の顔を出させることは、事故により他人に危害を加える可能性があり、道路交通法70条に違反する可能性があります。運転中に窓から犬を出すのではなく、こまめに休憩を取り外気に触れさせることが、愛犬の安全やストレス軽減に繋がると考えられます。
運転中は座席に犬を固定できるドライブボックスなどを使用し、安全に配慮してドライブを楽しみましょう。
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