自殺の要因を「点」ではなく「流れ」で見る
現在、若者の自殺は世界中で主要な死因の一つとなっており、社会の大きな懸念事項です。
近年のデータでは、こうした深刻な心理的危機による救急搬送や入院が増加傾向にあることが示されています。
オーストラリアでも25歳未満の死因として自殺が主要な位置を占め、近年は10代の自傷行為や自殺による救急受診や入院が増えていることも報告されています。
しかし、大きな問題として浮かび上がっているのは、SOSを抱える若者全員が医療機関に繋がっているわけではないという現実です。
実際、ニューサウスウェールズ州児童発達研究のデータでは、自傷行為や自殺念慮に関する記録は医療記録よりも児童保護の記録で見つかる方が多く、該当する子ども全体のうち公的な病院や外来の記録でも確認できたのは3分の1未満だったと述べられています。
10代の自殺が増えているという話があると、カウンセラーなどのサポートをする人たちを増やす、相談できる窓口を増やすなどの対策が話し合われますが、この事実は、実際多くの思春期の若者は、自殺を考えるような危機に対して、サポートを行うサービスを利用していないということです。
つまり、この問題については、本人たちが助けを求めてくるのを待つのではなく、危機が深刻化する前に、誰に支援が必要かを予測できる方法を確立することが重要なのです。
では、思春期の若者が自殺を考える背景には何があるのでしょうか?
若者の自殺という問題について考えるとき、いじめや受験ストレスなど直近のストレス問題に目を向ける人は多いかも知れません。
しかし実際はストレスについては、「コップの水が溢れる」という例えがあるように、何か特定の要因に原因を求めるよりも、過去からの累積が重要な問題になります。
そこで研究チームは、「逆境的な児童期体験(Adverse Childhood Experiences:ACEs)」を17種類に分類し、出生前から11歳までに起きた出来事を行政記録から洗い出し、思春期の自傷行為・自殺念慮との関連を分析しました
ACEsの具体的な内容は、次のようなものです。
親に関するACE
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親(母・父)の精神疾患
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親(母・父)の深刻な経済的困窮
(日本で言えば生活保護やそれに準じる状態) -
親(母・父)の犯罪歴・服役歴
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親(母・父)の死亡
子ども自身に関するACE
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児童相談所・児童保護サービスとの関わり
(虐待・ネグレクト・家庭の問題など) -
里親・施設などへの保護措置
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警察との接触
(家庭や近隣のトラブルで、警察の介入を受けた経験) -
子ども自身の犯罪・拘禁経験(主に学童期)
そしてこの研究では、出生前、0〜5歳、6〜11歳という発達段階ごとにACEsの累積を追跡し、似たパターンの子ども同士をまとめるという分析を行いました。
用いられたデータは、オーストラリアのニューサウスウェールズ州で出生登録された約7万人の子どもを対象に、医療や児童保護、警察などの行政記録を連結し、18歳頃までに記録された出来事を追跡したものです。

























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