なぜ「160年」も気づけなかったのか

アカエイは1841年、江戸時代にシーボルトらが日本各地で採集し、オランダ王立博物館(現在のNaturalis自然史博物館)に送られた標本に基づいて、ヨハネス・ミュラーとヤーコプ・ヘンレによって新種として記載されました。
当時の標本は、いずれも非常によく似ており、疑いもなく同じ種として扱われてきました。
ここに、長い混乱の出発点がありました。
その後、時代が進み、長崎大学の研究によって、有明海には見分けが難しいほど姿形が似た複数種のアカエイ属魚類がいることが分かってきます。
さらに、ミュラーとヘンレの原記載の図を精査すると、私たちがイメージする「アカエイ」と異なる外観にも見え、「本当にHemitrygon akajei(アカエイ)なのか」という疑問が浮上しました。
問題はここからが厄介でした。
Naturalis自然史博物館には、1841年の記載に関わる模式標本が6個体あると考えられてきましたが、20世紀半ばにオランダの研究者ボーセマンの調査で、実際には別の標本1個体が加わった計7個体が存在すると判明し、これらが暫定的にHemitrygon akajeiとみなされました。
しかも、その中で学名の基準として後から指定された標本は、形態的特徴が十分に現れていない幼魚でした。
似ている上に、決め手が出にくい年齢の個体が「基準」になっていたわけです。
そこで研究チームは、アカエイ類(アカエイ、シロエイ、イズヒメエイなど)の幼魚を多数採集し、成長段階や雌雄差による変異も含めて比較検討を積み重ねました。
時間がかかったのは、単に標本を見比べただけではなく、「変化する体のどこが種の違いで、どこが成長や性差による揺らぎなのか」を丁寧にほどいていく必要があったからです。

























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