あなたのプレイリストは知能を映すのか? 手がかりはメロディーではなく歌詞だった
あなたのプレイリストは知能を映すのか? 手がかりはメロディーではなく歌詞だった / Credit:Canva
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あなたのプレイリストは知能を映すのか? 手がかりはメロディーではなく歌詞だった (3/3)

2026.03.23 19:30:57 Monday

前ページ知能と結び付いているのは音楽ジャンルより歌詞だった

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プレイリストは知能診断になるのか

プレイリストは知能診断になるのか
プレイリストは知能診断になるのか / Credit:Canva

ここからは、今回の研究に加えて過去の研究結果も参考にしつつ「なぜその要素が知能と関係するのか?」を紹介していきたいと思います。

まず、「前向き一辺倒ではない歌詞」や「強すぎるポジティブ表現が少ない歌詞」が高めの側に出た理由ですが、論文はこれを、悲しさや陰りのある音楽が内省や人生の振り返りを助けることがある、という先行研究と結びつけています。

つまり、ここで効いているのは「暗い歌が賢い」という単純な話ではなく、少し陰りのある音楽のほうが、自分の考えを整理したり、気持ちを深く見つめたりする使い方に向きやすいのではないか、という見立てです。

関連研究でも、悲しい音楽は慰めや感情整理、自己反省のために聴かれやすく、さらに悲しい音楽のほうが内向きの思考や、考えが自分の内側へさまよう状態を強めやすいことが報告されています。

次に、「社会的な言葉が少なめ」「飾らない誠実さを感じさせる言葉」「家やベッドのような家庭語」が高めの側に出た理由です。

ここで論文が出している解釈は、かなり面白くて、社会的な盛り上がりよりも、個人的な意味づけや内面の整理に向いた歌詞が選ばれているのではないか、というものです。

「家」「ベッド」といった単語が特別に知能を示すという話ではなく、もっと広く言えば、外へ向かう社交の歌より、内側へ向かう私的な歌のほうが、高めの側と結びついたと読むわけです。

2007年の研究では、IQが高い人や知的関与の強い人ほど、音楽を合理的・認知的に使う傾向があり、気分調整などの情動的な使い方は相対的に弱いとされました。

さらに 2021 年の研究では、IQ が低い側ほど、音楽を強い感覚や強い感情を得るために使う傾向が高いと報告されています。

なのでこの部分は、知能の高めの側では「社会に見せる音楽」より「自分の中で噛みしめる音楽」へ寄りやすいのではないか、という予想だと考えるとわかりやすいです。

「ライブ感」が高い曲が低めの側に出た理由についても似た理由が考えられています。

ライブ音源はふつう、エネルギーが高く、勢いがあり、少し雑味もあって、コントロールされすぎていないものです。

著者たちは、そういう音源は、集中して考える、細かく分析する、静かに没頭するといった“認知寄りの音楽の使い方”には、やや向きにくいのではないかと見ています。

だから高めの側では、観客の熱気が入ったライブ盤より、より落ち着いて制御された録音が選ばれやすいのではないか、というわけです。

過去に行われた研究でも、高IQ側は音楽を合理的・認知的に使いやすく、低IQ側は強い感覚や感情を得るために使いやすいという報告があるので、ライブ感の高さ=刺激や高揚感の強さと考えると、既存の研究結果と明確に反するものではないでしょう。

「現在に焦点を当てた歌詞」や「曖昧さ・ためらいが少ない歌詞」が高めの側に出た理由については、論文では、こうした歌詞はより明確で、まっすぐで、分かりやすいメッセージを持っているため、そういう歌詞を好む人は、音楽にもより分析的で決断的な関わり方をしているのかもしれない、と解釈しています。

逆に言えば、社会語が多く、曖昧さやためらいが多い歌詞が低めの側に出たのは、より対人的で、その場の空気や感情の揺れに寄った音楽使用を反映しているのではないか、という読みです。

ここまでをまとめると、高めの側の人は、音楽を“盛り上がるため”より“考えるため・整えるため”に使いやすく、そのため歌詞も、より私的で、明確で、内省を促すものに寄りやすい。

逆に、低めの側では、音楽がより社会的・情動的・刺激追求的に使われやすく、そのぶん歌詞もライブ感も、外向きで盛り上がる方向の特徴を持ちやすいのではないか、という考えになります。

次いで母語以外の曲を多く聴く傾向と知能の高さについてです。

論文では、ドイツ語の曲の割合が低いことの意味として、言語能力の個人差や、母語の外での経験、たとえば外国語の習熟度を反映している可能性がある、と述べています。

今回のGCAには言語理解や知識の側面も入っているので、外国語により多く触れていることが、その一部を薄く拾っているのではないか、という見立てです。

もうひとつ面白いのは、母語の歌詞は、場面によっては認知課題をより邪魔しやすいという実験研究です。

読解課題では、歌詞つき音楽は無音より成績を下げ、しかも課題と同じ言語の歌詞のほうが、別言語の歌詞よりも強く邪魔することが示されています。

もし認知能力が高めの人たちが勉強や思考の場面で音楽を使い分けているなら、母語の歌詞より別言語の歌詞のほうが邪魔になりにくいため、選ばれやすい可能性もあります。

次に、音楽を長めに聴く傾向については、認知能力が高い人は、自分に合う音楽環境を見つけたら、それを生活の中で長めに維持しやすいのではないかと考えられます。

先にも述べたように、知能が高めの人は音楽をより認知的な目的、つまり集中、分析、内省のような用途で使っている可能性があり、そのためには作業や思考に合った音環境をしばらく維持することもあるでしょう。

それは「1曲に執着する」というより、たとえば勉強、読書、移動、考え事の時間に、毎回ちょうどいい温度の音楽を置いておく。

そういう使い方なら、再生は自然に長くなります。

言い換えれば「高めの側の人は、音楽を“刺激を浴びるため”より“環境を整えるため”に使いやすく、そのため一度しっくりくる音楽環境を作ると、それを生活や思考の流れの中で長めに維持しやすいのではないか」というものです。

これは「1曲を最後まで聴き抜く根性」ではなく、音楽を作業場の照明みたいに使っているイメージに近いと言えるでしょう。

一方で、認知能力が低い側では、音楽を強い感覚や強い情動を得るために使う傾向が高いという関連研究もあり、音楽との付き合い方がその場その場の刺激寄りになりやすく、長く安定して流し続ける使い方とは少しズレる可能性があります。

ただ今回の研究の中心となる証拠は観察的な研究で、関連する過去の研究の多くも同様に傾向を調べるに留まっています。

研究者たちも、これら理由として挙げられたものを確定したものと扱うにはまだデータが足りないことを認めています。

それでも、この研究が示している未来は少しだけ興味深いものです。

もし音楽だけでなく、本や移動、スマホの使い方など、さまざまな日常行動を組み合わせて見ていけば、より自然な形で人の認知状態を理解できる可能性があります。

たとえば、認知機能の低下に早く気づいたり、その人に合ったデジタル環境を自動で調整したりすることも考えられます。

もしかしたら未来のスマートウォッチには、脈拍や血圧などの生体データに加えて、音楽や映像の視聴履歴やその継続時間も見ながら、個人の認知機能の変化を総合的に教えてくれる、テストが要らない知能測定機になってくれるかもしれません。

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