1つを見つめていると他の点の色が変化する新しい錯覚を発見
1つを見つめていると他の点の色が変化する新しい錯覚を発見 / credit: Hinnerk Schulz-Hildebrandt
psychology

1つを見つめていると他の点の色が変化する新しい錯覚を発見

2026.03.26 17:00:44 Thursday

アメリカのハーバード大学医学部(HMS)のヒンネルク・シュルツ=ヒルデブラント氏は、じっと見つめている1点以外の周りの点が青っぽく見えてくる不思議な錯視が提示されました。

研究者によれば、この錯視は目の場所ごとの性質の違いや脳の色を補正して認識する能力、紫が脳内で合成された存在しない色などの複数の要因が噛み合わさった結果だと考えられています。

あなたの目にはこの点は何色に見えるでしょうか?

研究内容の詳細は2026年2月26日に『Perception』で公開されました。

When purple perceived only at fixation: A fixation- and distance-dependent color illusion https://doi.org/10.1177/03010066261423048

見つめている周りの点の色がどんどん変わっていく

1つを見つめていると他の点の色が変化する新しい錯覚を発見
1つを見つめていると他の点の色が変化する新しい錯覚を発見 / ヒルデブラント氏はプレプリントにてこれは「新しい錯覚(novel optical illusion)」と述べています。/credit: Hinnerk Schulz-Hildebrandt

新たな錯覚は、青い背景と9つの紫の点によって構成されています。

色覚が正常ならば、一点だけを見つめていると、その一点は紫に見えるのに、周りの紫色の点が青い背景に溶けるようにして青っぽく見えてくることに気付くでしょう。

しかも視線を別の点に移すと、「紫に見える役」もそちらへ移動します。

また点の数をより多くしたものでは距離による変化も出ました。

著者の観察では、近い10センチほどでは紫に見える点はごくわずかですが、30センチではそれが増え、60センチ以上ではほとんど全部の点が紫に戻って見えるとしています。

青背景の上に書かれた紫色の文字でも、著者は読んでいる単語だけが紫に立って、周辺の単語は青っぽく沈んで見えると記しています。

では、なぜ見つめた一点だけがより紫に見えるのでしょうか。

研究者によれば、3つの状況証拠が重要になるといいます。

それぞれの証拠はたいした意味のないように見えますが、それら3つが合わさると、まるで名探偵の推理のように、理由が見えてくるはずです。

1つ目の証拠は紫がもつ特殊性にあります。

実は、紫は単一の波長の光としては存在せず、赤っぽい信号と青っぽい信号をが組み合わせて、はじめて立ち上がる“脳内ブレンド色”です。

そのため厳密な意味で存在しないのは「紫という単一波長の光」であって、紫に見える物体そのものではありません。

物体が紫に見えるとき、そこにあるのは単一の紫の光ではなく、反射や発光の組み合わせを脳が紫としてまとめた結果です。

そのため入力のバランスが少し崩れるだけで、見え方も揺れやすくなっています。

著者も紫を「壊れやすく不安定な知覚」と位置付けています。

2つ目の証拠は、視界の真ん中は青が苦手という事実です。

青い光に強く反応するS錐体は網膜全体でも8〜12%ほどしかなく、中心窩の絶対中心ではほとんど見られないことが知られています。

またその部分の手前には青い光をよく吸収する黄色の色素が存在しています。

つまり私たちの目は、視野のど真ん中に「青だけ見えにくくしたサングラス」がかかっているようなものです。

3つ目の証拠は、脳が色を当てる仕組みです。

脳は色を単独で読むのではなく、背景との関係で読みます。

目の前にあるリンゴが赤く見えるのも、壁が白く見えるのも、実は目に入った光を脳が一度整理し、解釈し直した結果です。

また青い背景に紫の点というように、似た系統の色が配置された場合、脳は周囲との関係の中で点の青さを少し弱めるように働きます。

すると見ている点は普通よりもより紫っぽく見える修正を受けるのです。

もし名探偵なら、この段階で「全ての証拠が1つの結果を導いた!」と叫ぶかもしれません。

しかしそんな人は少数派でしょう。

なので次ページでは、3つの証拠の組み合わせがどのように進むかを研究者の見解に基づいて見ていきたいと思います。

次ページ錯覚で色が変わるメカニズム

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