謎の減少を続ける男性の精子
1992年に発表された研究では、過去60年間で男性の精子数が世界的に50%減少していると報告されています。
その後、男性の精子濃度が低下していることを示す複数の研究がまとめられ発表されました。
2017年にはこうした研究を元に、1973年~2011年の間における世界中の男性の精子濃度が50%~60%低下していることを示す論文も報告されました。
これらは非常に重要な報告ですが、主に男性の精子総数や精子濃度に焦点を合わせています。
そのため、2019年には男性の精子の運動率に焦点を当てたより強力な男性不妊症に関する研究が行われました。
その結果、過去16年間で男性の精子の運動率は約10%低下していたことが新たに発見されたのです。
科学的調査は一貫して、今日の男性は、以前に比べて精子の生産量が低下しており、精子の健康状態も劣っていることを示していました。
この問題は、現在進行している各国の出生率の低下に影響している可能性があります。
そして何より問題なのが、このような傾向が進んでいる原因が未だわかっていないということです。
今回の報告をまとめているバージニア大学泌尿器科准教授ライアン・P・スミス氏は、それが環境毒性と関連している可能性を指摘しています。
環境毒性は、健康に影響を与える化学物質などの汚染のことで、粒子状物質(PM)、二酸化硫黄、窒素酸化物などはその代表で、特に精子の質に寄与する可能性があります。
米国では、8万を超える化学物質が登録されていて、毎年2000近い新しい化学物質が導入されています。
それが人間の健康に対して及ぼす長期的なリスクについては、十分に検証できているとはいえません。
携帯電話、PC、モデムなどの電磁波が精子数や、精子の運動性に関連している可能性も考えられます。
もちろん、こうしたライアン氏の推測を裏付けるような証拠が明確に見つかっているわけではありません。
しかし、ここ数十年の間に起きた変化として相関性を考えると、無視できない要因なのは確かです。