岩の上にとまる、くちばしの太いハシブトガラス No.0003

ナゾロジー図鑑 ・ 生き物

カラス

Corvus

人の顔を覚え、道具をつくる。
街でくらす黒い知恵者。

ナゾロジーの記事
18本
全長(ハシブトガラス)
46〜59cm
カラス属のなかま
42種以上

カラスは、スズメ目カラス科の鳥で、日本ではハシブトガラスとハシボソガラスの2種がふつうに見られます。道具をつくる、人の顔を覚える、数を理解するなど、とても頭がよいことで知られます。寿命は野生で10〜20年ほどです。

図鑑データ

分類
鳥類 › スズメ目 › カラス科 › カラス属
学名
Corvus(カラス属)
英名
crow(クロウ)、raven(レイブン)
種の数
カラス属は少なくとも42種
大きさ
全長34〜70cm(ハシブトガラスは46〜59cm、ハシボソガラスは48〜52cm)
すみか
南アメリカと南極をのぞく各大陸
日本では
ハシブトガラスとハシボソガラスの2種が一年中すむ(記録は計7種)
食べもの
雑食(虫、木の実、小動物、動物の死がい、生ゴミなど)
子育て
一夫一妻。卵は2〜5個ほど、20日前後温める
寿命
野生で10〜20年ほど(ハシブトガラス)。飼育下で59歳の記録
保全状況
ハシブトガラス・ハシボソガラスとも低危険種(LC)

カラスとは

カラスは、スズメ目カラス科の鳥のうち、カラス属(学名 Corvus)を中心とするなかまです。カラス属には少なくとも42種がいて、南アメリカと南極をのぞく各大陸にすんでいます。英語では、小さめの種を crow(クロウ)、大きめの種を raven(レイブン)と呼ぶことが多く、どちらもカラス属のなかまです。

地面に立つ大きなワタリガラス
ワタリガラス写真: Diliff(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

日本でふつうに見られるのは、ハシブトガラスとハシボソガラスの2種です。どちらも一年中同じ地域でくらす留鳥(りゅうちょう)で、ふだんの会話ではまとめて「カラス」と呼ばれています。

大きさと体のつくり

カラス属の大きさは、メキシコの小さな種の全長34cmから、ワタリガラスなど大きな種の60〜70cmまでさまざまです。日本のハシブトガラスは全長46〜59cm、ハシボソガラスは48〜52cmほどです。

体はがっしりしていて、頭は小さく丸く、くちばしは太くて先が少し下に曲がっています。脚はじょうぶで、尾は短めです。オスとメスの見た目のちがいはほとんどありません。

ハシブトガラスの頭と太いくちばしのアップ
ハシブトガラスの頭写真: Alpsdake(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

目もすぐれています。カラスは、人と同じ赤・緑・青に加えて紫外線も見分けられる「4色型色覚」をもっています。

ハシボソガラスの頭骨を横から見たところ
ハシボソガラスの頭の骨写真: 20100(Wikimedia Commons)(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

カラスはなぜ黒い?

カラスの羽は黒一色に見えますが、ハシブトガラスの羽には紫色の金属のようなつやがあります。日本では、このつややかな黒を「烏の濡羽色(からすのぬればいろ)」と呼び、美しい黒髪のたとえにも使ってきました。

黒さのしくみについては、2026年に、ハシブトガラスでは色素をつくる細胞の受容体「MC1R」がいつも働いたままの状態になっていて、それが黒い羽に関わっている可能性があると報告されました。MC1Rは、色素をつくる細胞が、黄色や赤っぽい色素ではなく黒っぽい色素(メラニン)をつくるように切りかえる役目をもっています。

ただし、カラスのなかまには、白と黒の2色のコクマルガラスや、こげ茶に白いはん点のホシガラスのように、全身が黒くないものもいます。

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ハシブトガラスとハシボソガラスの見分け方

よく似た2種ですが、くちばしと額、鳴き声と鳴き方、くらす場所に注目すると見分けられます。

  • くちばし:ハシブトガラスは名前のとおりくちばしが太く、上のくちばしが大きく曲がっています。ハシボソガラスは細めで、あまり曲がっていません。
  • 額:ハシブトガラスは額(くちばしの上)が出っぱっていますが、ハシボソガラスは出っぱっていません。
  • 鳴き声と鳴き方:ハシブトガラスの声は全体に低く、ハシボソガラスは「ガーガー」と少しにごった声で鳴きます。ハシボソガラスは鳴くとき、頭を突き出して、おじぎをするように上下に動かします。
  • くらす場所:ハシボソガラスは河川敷や農地など開けた場所に多く、都市化が進んだ場所ではあまり見られません。ハシブトガラスは市街地にもよくなじみ、東京の近くでは圧倒的に多いとされています。
  • 食べものと歩き方:ハシブトガラスは動物を、ハシボソガラスは植物を食べる傾向が強めです。ハシボソガラスは地面を左右の脚を交互に出して歩き回る時間が長く、地面で餌をよくさがします。

地面に立つ、くちばしの細いハシボソガラス
ハシボソガラス写真: pelican from Tokyo, Japan(CC BY-SA 2.0) / Wikimedia Commons

くちばしを開けて鳴くハシボソガラス
鳴いているハシボソガラス写真: Alpsdake(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

見た目は似ていても、この2種はとくに近い親戚ではありません。ハシボソガラスにいちばん近いのはクビワガラスという別の種で、ハシブトガラスは少しはなれた関係です。

どこにいる? 日本のカラス

ハシボソガラスはユーラシア大陸に広くすみ、ハシブトガラスは東アジアから東南アジア、ヒマラヤ山脈のまわりにかけてすんでいます。日本では、ハシブトガラスは小笠原諸島をのぞく全国の低地から山地に、ハシボソガラスは北海道から九州までの平地から低い山にすんでいます。

このほか、冬になると北海道にはワタリガラス、九州にはミヤマガラスやコクマルガラスが渡ってきます。迷ってやってきた鳥もふくめると、日本では計7種のカラスが記録されています。山の中には、カラスの近いなかまのホシガラスもすんでいます。

カラスは、子育てをしない時期、とくに冬に、200羽から数万羽もの大きな集団でねぐらをとることがあります。都市のハシブトガラスは、大きな公園や神社の森など、まとまった林をねぐらにします。

何を食べる?

カラスはほとんど何でも食べる雑食性です。昆虫、木の実や種、貝やミミズ、カエル、ほかの鳥の卵やひな、ネズミ、動物の死がいまで食べます。都市では生ゴミをあさり、畑では農作物を食べることもあります。

舗装道で虫の幼虫をくわえたハシボソガラス
ガの幼虫を食べるハシボソガラス写真: Nmspec(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

見つけた食べものを物かげに隠しておき、あとで食べる「貯食(ちょしょく)」もします。ハシボソガラスは、かたくてくちばしで割れない食べものを、高いところからかたい地面に落として割ります。日本の都市では、道路にクルミを置き、車にひかせて殻を割るカラスも見られています。

木の枝の上で袋入りのお菓子をくわえるハシブトガラス
お菓子をくわえたハシブトガラス写真: Alpsdake(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

海外では、ワタリガラスがオオカミの群れのあとについて回り、オオカミがしとめた獲物を分けてもらうことが知られています。弱った獲物がいると、鳴き声でオオカミに知らせることもあります。

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カラスはなぜ頭がいい?

カラスのなかまは、世界でもとくに知能の高い動物のひとつと考えられています。体の大きさにくらべた脳の大きさは多くのサルのなかまと同じくらいで、前脳には神経細胞がぎっしりつまっています。考えることや学ぶことに関わる大脳の部分が、大きくよく発達していることも分かっています。

  • 道具をつくる:カレドニアガラスは、小枝や草の茎をむしったり曲げたりして道具をつくり、食べものを取り出します。2018年の実験では、そのままでは短すぎる部品を組み合わせて、長い道具をつくったカラスもいました。
  • 人の顔を覚える:カラスは人の顔を見分け、危険な人の顔を覚えて、仲間にも伝えることが分かっています。アメリカガラスが9年半にわたって人の顔を覚えていた例もあります。
  • 数がわかる:ハシボソガラスは「何もない(ゼロ)」を、1のとなりにある数のように理解できることが、2021年の研究で示されました。2024年には、カラスが合図に合わせて1〜4回の決まった回数だけ鳴き分けられることも報告されています。
  • 水飲み場を使いこなす:横浜市の弘明寺(ぐみょうじ)公園では、カラスが水飲み場の蛇口をひねり、水浴び用と飲み用で水の量を調節していたことが知られています。
  • 遊ぶ:電線にぶら下がる、すべり台をすべる、雪の坂をあお向けですべり下りるなど、遊びのような行動も観察されています。

木の枝にとまるカレドニアガラス
カレドニアガラス写真: Yi-Kai Tea(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

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ワタリガラスでは、生後4か月ですでに、大人の大型類人猿によく似たテストの成績を出したという研究もあります(2020年)。

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寿命と子育て

カラスは一夫一妻で、春から夏にかけての繁殖期に、オスとメスが協力して子育てをします。木の上に小枝を組んで巣をつくりますが、最近は電柱や看板などにも巣をつくり、針金やプラスチックなどの人工物も材料に使います。電柱に針金で巣をつくると、ショートして停電などの原因になることがあります。

電線のような材料でつくられたカラスの巣と卵
電線などでつくられたイエガラスの巣写真: Raju Kasambe(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

産む卵はハシブトガラスで2〜5個、ハシボソガラスで3〜5個ほど。卵を温める期間は20日前後で、ひなは30〜40日ほどで巣立ちます。巣立ったあとも、しばらくは家族でいっしょに行動します。

巣の中に並んだハシボソガラスの卵
建物の足場につくられたハシボソガラスの巣写真: Martin Lindner(改変:Hic et nunc)(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

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子育て中の親鳥は神経質になり、巣に近づいた人や動物を敵として覚えて、威嚇(いかく)したり攻撃したりします。まず鳴いて威嚇し、次にうしろから頭の近くまで舞い下りてはさっと上がる行動をくり返します。攻撃になると、うしろから頭をけったり、髪をつかんで引っぱったりします。

寿命は、ハシブトガラスで野生10〜20年ほど、飼育下で約20年とされます。飼育されたカラスでは59歳、野生のアメリカガラスでは30歳近くまで生きた記録があります。

名前の由来と、人とのかかわり

「カラス」の「ス」は、カケスなどと同じく鳥を表す言葉ではないかといわれています。「カラ」は体の色の「黒」から来たという説と、「カァカァ」という鳴き声から来たという説があり、研究者の間でも意見が分かれています。

日本の神話では、三本足の「八咫烏(やたがらす)」が神武天皇を道案内したと伝えられ、日本サッカー協会のシンボルマークにもなっています。カラスは昔から世界各地で「神の使い」とあがめられる一方、不吉な鳥ともされてきました。明治時代の1891年には、二宮忠八がカラスの翼にヒントを得た模型飛行機「カラス号」を飛ばしています。

一方で、ゴミ集積所を荒らしたり、農作物を食べたりすることが問題になってきました。日本ではゴミ置き場に防鳥ネットをかけるなどの対策が進み、東京都心のカラスの数は2000年ごろをピークに減っています。

歩道に散らばった、カラスに破られたゴミ袋の中身
カラスに荒らされたゴミ写真: Syced(CC0) / Wikimedia Commons

なお、日本のハシブトガラス・ハシボソガラス・ミヤマガラスは、鳥獣保護法により、決められた狩猟などの場合をのぞいて、捕まえることが原則として禁止されています。

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よくある疑問

ハシブトガラスとハシボソガラスはどう見分ける?
くちばしが太く、額が出っぱっているのがハシブトガラス。くちばしが細く、額が出っぱっていないのがハシボソガラスです。ハシボソガラスは「ガーガー」とにごった声で、頭を上下に動かしながら鳴きます。
カラスの寿命はどのくらい?
ハシブトガラスでは、野生で10〜20年ほど、飼育下で約20年とされています。飼育されたカラスで59歳まで生きた記録があります。
カラスはなぜ黒いの?
ハシブトガラスでは、黒っぽい色素(メラニン)をつくるように切りかえる受容体「MC1R」が、いつも働いたままの状態になっていることが2026年の研究で分かり、これが黒い羽に関わっている可能性があると報告されています。
カラスに襲われるのはなぜ?
春から夏の子育ての時期に、巣に近づいた人を敵と見なして追いはらおうとするためです。うしろから頭の近くに舞い下りてくることがあり、攻撃になると頭をけったり髪を引っぱったりします。巣の近くには近づかないようにしましょう。
カラスは飼える?
日本のハシブトガラス・ハシボソガラス・ミヤマガラスは、鳥獣保護法により、決められた狩猟などの場合をのぞいて、捕まえることが原則として禁止されています。
カラスはどのくらい頭がいい?
体の大きさにくらべた脳の大きさは多くのサルのなかまと同じくらいで、道具づくり、人の顔の記憶、数の理解などができることが実験で確かめられています。ワタリガラスは生後4か月で、大人の大型類人猿によく似たテスト成績を出したという研究もあります。

ナゾロジーで読む18本

  1. 01 ワタリガラスは「死骸が集まる場所」を予測していた
  2. 02 なぜカラスは真っ黒なのかーー科学的な秘密をついに解明
  3. 03 葬儀にネクロフィリア!? 仲間の死にも特別な行動をとる知能が高いカラスの不思議
  4. 04 カラスには図形の「規則性」や「違い」を識別する能力があると判明
  5. 05 カラスは報酬のために「友情」なら裏切るが「家族の絆」は尊ぶと判明

参考文献

  1. Bayern AMP von ほか (2018) Compound tool construction by New Caledonian crows. Scientific Reports
  2. Marzluff JM ほか (2010) Lasting recognition of threatening people by wild American crows. Animal Behaviour
  3. Kirschhock ME ほか (2021) Behavioral and Neuronal Representation of Numerosity Zero in the Crow. The Journal of Neuroscience
  4. Liao DA ほか (2024) Crows “count” the number of self-generated vocalizations. Science
  5. Pika S ほか (2020) Ravens parallel great apes in physical and social cognitive skills. Scientific Reports
  6. Nakano S ほか (2026) Constitutive activation of MC1R in the large-billed crow (Corvus macrorhynchos) and its potential role in black plumage. General and Comparative Endocrinology
  7. Wikipedia「カラス」(日本語版)
  8. Wikipedia「ハシブトガラス」(日本語版)
  9. Wikipedia「ハシボソガラス」(日本語版)
  10. Wikipedia「Corvus」(英語版)
  11. Wikipedia「Crow」(英語版)
  12. Wikipedia「Large-billed crow」(英語版)
  13. Wikipedia「Carrion crow」(英語版)
  14. Wikipedia「Melanocortin 1 receptor」(英語版)
  15. Wikidata「Corvus」(Q43365)
  16. Wikidata「Corvus macrorhynchos」(Q111674)
  17. Wikidata「Corvus corone」(Q26198)

表紙の写真: Alpsdake(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons
ほかの写真のクレジットは、それぞれの写真のページにあります。
この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。